【観察眼】パイナップル論から考える外国関連報道のあるべき姿

2021-03-23 11:53  CRI

 日本言論NPOと中国国際出版集団による2020年共同世論調査によると、中国に「良くない印象」を持つ日本人は89.7%に上り、過去最悪となっている。悪化の理由は様々に分析されているが、ここでは最近の日本メディアの中国関連報道の姿を取り上げて論じたい。

<日本メディアのパイナップル報道から>

 先日、フリージャーナリストの池上彰さんが全国向けのラジオ番組で、「中国」をテーマに切り込んだ。番組は中国大陸が、病虫害を理由に台湾産パイナップルの輸入差止めを皮切りに、オーストラリア産の牛肉の輸入停止、大麦、ワインに追加関税や保証金を徴収するなどの動向も取り入れながら、対立する国・地域に対して「食糧の輸入を差し止める、減らす形で報復している」として、相手国・地域を「自分に従わせようとしている」「露骨な動き」だとし、「大国らしくない」と批判した。

 さらに、「輸入を止めたりしたら中国国内の市民生活には影響はないか」という聴取者からの質問に対して、池上氏は「中国国内で対策が取られている」とし、去年の夏、大雨で農作物に被害が出たことを背景に、習近平国家主席は「大食いはやめなさい、食べ残しはしないように」とキャンペーンを始めたと同時に、中国国内で大食い番組がすべて禁止され、レストランでは食べ残しに罰金制度を導入したと言及し、「相手に圧力を与えるために自分の国民も我慢させる」、「一党支配だからできること」と総括した。

 ただし、中国で暮らす一生活者の感覚でいうと、池上氏の以上の分析に驚きを禁じえないのが正直な感想である。

<外部の目線と内部の目線にあるズレ>

 まず、国際貿易の現状を語るならば、保護主義や「貿易上のいじめ」現象による国際自由貿易体制への破壊というのが出発点ではないかと指摘したい。中国の民間企業が言われもない理由でバッシングを受けているという明白な事実もある。

 もっとも、台湾地区と中国大陸との貿易は「国際貿易」のカテゴリーに当たらない。それはさておいて、実態としてはコロナの影響があったものの、両岸の経済・貿易面での依存度が高まりつつある。大陸は台湾島内の農産品に対し、通関、輸送面で便宜をはかる「グリーン通路(ファストトラック)」を設けており、2020年、台湾の大陸向け輸出が輸出総額の実に43.9%も占め、過去最高となっている。パイナップルに検出された病虫害は品質管理の問題で、台湾側も引き続き厳しい管理措置を導入する意思を表明している。

 また、豪中関係となると、さらに複雑な背景が絡んでくる。豪シンクタンクの発表したところでは、去年、同国国籍を取得した中国系住民の18%が、出身から脅しや攻撃を受けており、37%の中国系住民は差別を受けたと感じたことが分かった。こういったマクロ的な背景や深層にある問題にまったく言及せずに、中国側がその一連のやり取りの中で講じた行動を「自身の目的に達するために起こした制裁」と一方的に解説を行うのでは、果たして不偏不党、公正・中立を貫いたものと言えるものか。

 次に、安定して95%以上の食料自給率を保つ中国は最近、国民所得の増加に伴い、海外からの輸入食品が増えている。ただし、この部分は主として、ハイエンドの需要を満たすためのもので、正常な食品供給に影響を及ぼすことはない。輸入食品が減少した分、国民に節約を強要するといった分析は最初から成り立たない論理である。

 たしかに、昨年8月、中国の最高指導者である習近平氏は飲食における浪費をやめるよう指示した。飲食にみられる浪費問題の解決は、中国では以前から注目されてきたことである。と同時に、もっと広い視野に立てば、国連食糧農業機関(FAO)は2020年、コロナウイルスの影響で世界で食料不足に陥る人口は1億3千万人に増える恐れがあり、世界はこの50年で最も深刻な食料危機に陥る恐れがあると警鐘を鳴らした。中国の指導者は国民に食糧の安全確保に関心を持つようにと呼びかけたのは、地球的視野に立ったものであり、大国だからこその行動と言える。

 なお、池上氏が言及した「大食いのオンライン中継の禁止」をめぐっては、その本当の姿を極端な形で物語った出来事が起きた。3月10日、動画共有アプリ「ティックトック」で263万人のフォロワーを有する大食いライブ配信者の「泡泡龍さん」が急死した。

 29歳だった。2019年から大食い生中継を始め、体重が160キロ超、大食い王の別名がある彼は、毎回の生配信が終ると机いっぱいに食べ物の残滓を残している。しかし、彼自身の健康は節度のない飲食で害され、亡くなった後に彼のサイバー空間には「願わくば天国にはもうバイキングがないように」などの書き込みが残されていた。

 一部の人の猟奇的な心理により、食べることが病的なパフォーマンスにされ、若者の死につながった悲しい出来事と言える。そうした文脈で起きた当局による大食いオンライン中継の整理整頓は、むしろ合理的な面が多いと見られている。理由はまさにそこにある。

 偶然だったからかもしれないが、池上氏が出演したその日の番組には、

 北京などを席巻した黄砂のニュースも伝えられていた。長さはわずか50秒。

 内容は中国気象局の発表内容の紹介のみだった。ただ、これも偶然だったかもしれないが、池上氏のコーナーのすぐ後に読み上げられただけ、中国に対してすでに反感をもった聴取者のイメージを、さらに悪化させた「客観的」な効果があったことも事実と言えよう。

<聴取者に求められるメディアリテラシー>

 パイナップルから「中国」に切り込む。良い企画ではあるが、本来ならば国際情勢の大きな背景の中で語るべきだった。しかし、論点の落とし所は、「中国はどれだけ理不尽なことをやり続けてきた国なのか」だった。確かに分かりやすい。しかし、世の中の実態はそこまで単純なものではないことを指摘したい。

 さて、黄砂の話に戻ろう。北京の空は刻一刻と変わっており、この十年で最悪の黄砂に見舞われた翌朝、「台風一過」のような青空が広がっていた。いつもは黄砂だけがニュースになる日本メディアは、今回は“北京に「砂嵐一過」の青空 きょう午後にも黄砂は日本へ”と題した記事が写真入りで配信されていた。変化する情勢を変化の目で報道するその姿勢を高く評価したい。

 こうした動きと合わせて、受け手側の姿勢について申したいことがある。

 まずは中国で起きたことだった。去年6月、「日本の政府系医療検査機構が、2019年1~3月の献血血液から新型コロナウイルスの抗体を検出した」という報道が日本在住の中国人フリージャーナリストにより配信された。記事は日本メディアの報道内容の紹介という形で配信され、掲載後、たちまち大勢の一般読者による「誤認」が指摘された。激しい議論の挙げ句、日本政府の発表は「抗体検査キット」の性能評価の結果に過ぎず、日本国内に2019年から感染者がいたという発表ではなかったとし、もともとの姿が突き止められた。

 次は日本の事例である。共同通信客員論説委員の岡田充氏は最近、オンライン方式で開かれた講座の中で、日本メディアの香港関連報道にダブルスタンダードが見られると指摘した。たとえば、トランプ支持者が米連邦議事堂に乱入した時、「民主主義の死」と非難したのに対し、香港立法会にデモ隊が乱入してもデモを擁護すること。または、某全国紙の社説は、香港の文化について、「19世紀以降、英国の植民地支配下で育まれた独特の都市文化」という植民地支配の謳歌を匂わせるような表現していると鋭く切り込んだ。

 メディアの報道を鵜呑みにせずに、自らの判断力を養って冷静に判断する。以上の2つの事例から学んだことと言える。台湾産パイナップルは日本でたくさん買われているようだが、忘れないでほしいのは、パイナップルの真の味は、それをいかにして食べたいかというあなた自身の判断にもかかっていることを。(CRI日本語部論説員)

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10月29日放送分
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