北京
PM2.577
23/19
チベット自治区は中国で貧困発生率が最も高い地域の一つです。しかし、その厳しい自然環境にも関わらず、去年2019年末の時点で、チベット自治区では62万8000人が貧困から抜け出し、74の県が貧困村のリストから外れることができました。さらに、今年上半期には、この地域の生産高や住民の可処分所得の伸び率がいずれも国内トップとなり、人々の生活が大きく改善されたことが示されました。
26歳のナンカワンチュさんはナチュ市セニ区ロマ鎮第4村の村民で、貧困扶助の対象者でした。彼は2018年からガルド生態牧畜産業モデル基地に勤め、ヤクの飼料になる燕麦などの栽培を担当するようになりました。月給3200元の安定した収入を得たことで、ナンカワンチュさんは貧困から抜け出すことができました。
ガルド生態牧畜産業モデル基地は、この地域における牧畜業の最大企業として、2017年末に設立されました。投資額は1億元に上り、1000頭のヤクが飼育できる規模を誇ります。この基地では、地域の812世帯の貧困家庭の人々を雇用することで、一世帯あたりに年間9200元、日本円にしておよそ15万円の収入増をもたらしました。また、周辺の167社の牧畜合作社との連携により、これまでに3203人の就職口を生み出しています。さらに、牧畜民は各自が飼育するヤクのミルクを、基地が設置した134カ所あるステーションに売ることができるため、ミルク1キログラムあたり12元の収入も、確実に得られることが保証されています。
チベットは特殊な地形や過酷な自然環境を有しているため、人間の生活に適さない場所も沢山あります。そうしたエリアに住む人々の生活改善を図る手段として、各地では移住政策が実施されています。その対象の一つである崗玉村は、墨脱県において日常の交通に「渡り綱」を利用していた最後の村です。ここでは2014年まで、村を出入りする際には200メートルの渡り綱を使うしかありませんでした。33世帯の村民すべてがこの方法でしか村を出られなかったため、子どもの通学やお年寄りの通院などはとても困難でした。
この状況は2014年以降に徐々に改善されていき、[UK1] 2019年には広東省からの3000万元の投資を含む、トータル1億元が国から投資されたことで、崗玉村をはじめとする「生活環境が最も厳しい自然村」3カ所は、94キロ離れた場所に村ごと移住されました。新しい土地と移住のための手当てが村民に与えられ、村全体が一斉に貧困脱却を実現したのです。新しい村では茶産業などが興され、村民たちは家から近い場所で仕事ができるようになっています。また、現在は、村と外部をより便利につなぐ道路も建設中です。
ところで、チベットは寄生虫が原因の感染症・エキノコックス症の流行が深刻な地域でもあります。2016年の調査では、その発生率は全国水準の7倍近くで、患者数は2万6000人でした。エキノコックス症の患者の多くは、病気を理由に貧困に陥っていました。そこで政府は2015年から医療支援チームを現地に派遣し指導を行い、13カ所の病院でエキノコックス症が治療できるようになりました。チベットではいま、病気から快復して健康を取り戻した人々が、一層前向きになって生活改善に取り組んでいます。
「小康社会に向かう中国人の暮らし」、今回は自然環境が厳しいチベット自治区での生活改善の話をお届けしました。お相手は王秀閣でした。ではまた来週、お楽しみに。(閣、謙)