北京
PM2.577
23/19
中国では新型コロナウイルスとの戦いが収束に向かいつつある。だが、このウイルスとは長く共存することになるとの指摘もあり、個々人が持つ衛生観念の重要性が高まっている。この約3カ月を振り返ると、市民の行動様式に現れたささやかな変化に気づく。
各自の箸を使い、同じ大皿料理をシェアする。それが中国で長く続いてきた食事スタイルだ。しかしここ最近は食器や料理を介した感染リスクが改めて注目され、料理を予め取り分けて配膳する「分食制」や、取り箸や取り分け用スプーンの普及を呼びかける動きが盛んだ。
中国では、毎年4月は「愛国衛生月間」。その原点は、新中国成立直後に発生したペストや、住血吸虫症の撲滅に寄与した「愛国衛生運動」にある。この伝統ある取組みの今年の重点も、「分食制」や取り箸の普及であった。
中国での「分食」と取り箸の普及に関する記録は1930年代にまで遡る。その後、80年代のA型肝炎の大流行、2003年のSARSの集団発生と、公衆衛生上の緊急事態が起こる度に食事のあり方を見つめ直す機運が高まり、いくらか進展が見られたが、いずれも定着には至らなかった。今回も新型コロナウイルスが中国の食卓をどこまで変えるかはまだ分からないこともある。
だが、これまでに無い機運には注目したい。今回は最初に感染が拡大した武漢市や湖北省だけでなく、全国規模の外出自粛要請が2ヶ月あまり続いた。公衆衛生の重要性は個々人と社会の共通の記憶となった。パンデミックという全人類の記憶になったとすら言える。
今、若者を中心に「分食」と取り箸の習慣を家庭に導入する人が増えていると聞く。飲食店も、衛生観念が高まった利用客のニーズに応えるべく、努力を始めている。料理を取り分けて提供する店や、取り箸などが混ざらぬよう、サイズや色など見た目で区別がつく食器を導入する店も増えた。
「分食」や取り箸は、ウイルスと長く付き合うための工夫の一つに過ぎない。しかし、この心構えと不断の努力こそが、世界に安心・健康な暮らしをもたらす。試行錯誤を重ねてよりよい社会と生活を目指していくことは、14億の中国人のみならず人類共通の願いだ。まずは食卓から、共に努力を始めよう。(CRI日本語部論説員)