北京
PM2.577
23/19
4月13日 北京の団地に咲く紫金草の花(燕撮影)
北京の今日の最高気温は26度です。紫花だいこん(紫金草)の花が一面と咲く頃となりました。日本では一部の自治体で緊急事態宣言が発出され、皆さんが暮らし、移動、仕事に不便を被っている方も多いかと思います。感染拡大の防止には、移動を制限することが効果的だと証明されていますので、どうか今は辛抱するよう心から願っております。
一方、ロックダウンは発令されたことのない北京では4月半ばになっても、外出の自粛と団地や商業施設に入る度の出入りチェックと検温が続いています。そのため、昼間の町中やバスの中は依然として人の姿が多くありません。しかし、暖かくなったのに連れ、夕方頃には、公園の中も団地の広場にも散策する市民や、ゲームをする子どもたちの姿が増えています。
今週も最近届いたお便りの紹介に続いて、「新型コロナウイルスと戦う最前線」の動きと中日交流の絆にフォーカスしてお送りしてまいります。
<新型コロナウイルスとの戦い>
黒龍江省綏芬河からの入国者、243人が感染確認
中国大陸部での重症患者が減少し続け、海外からの入国者を除けば、初めて100人を割って83人にまで減少しました。
しかし、その一方では、海外からの流入による感染は然として深刻です。最近、特に目立つのは、ロシアと国境を接する黒龍江省の綏芬河です。ここは人口7万人の小さな町で、感染者がずっと報告されていませんでした。しかし、3月下旬から、ロシアから綏芬河経由で入国する人が約2500人に達したのにつれ、その中から次から次へと感染者が確認されました。その人数は、4月13日夜9時半時点で243人に。このほか、無症状の感染者は102人、疑い例8人、1479人が隔離観察中。
30の省・区・市が学校再開の計画を発表
北京市政府は12日、中学三年生と高校三年生の学校再開の時間を発表。これにより、湖北省を除き、中国大陸にある30の省・自治区・直轄市が学校再開の時間をすべて発表しました。
北京では、学校での授業再開について、高三は4月27日、中三は5月11日をめどに準備を進めていくことになっています。ただ、幼稚園や小学校、中学と高校の他の学年、大学の学校再開の時間は未定です。
ほかの地域も似たような状況にあります。夏の大学受験と高校受験の日程に備えて、高校三年生と中学三年生を優先して学校を再開していまs。中でも、青海、新疆、チベット、寧夏、雲南などでは他の地域と比べて、新型コロナの被害がそれほど深刻ではない地域では、すでに3月中旬から下旬の間に、高三、中三の生徒を対象に、学校を再開しました。
なお、ほかの学年については、2月からオンラインレッスンの形で授業を始めているということです。
鐘南山院士、新型コロナウイルス感染の最新状況を語る
中国工程院の院士、呼吸器疾患の専門家、鐘南山が12日に人民日報のインタビューを受け、新型コロナウイルスによる感染症についての質問に答えました。
鐘南山院士(写真:人民網)
—海外からの流入で、中国で再び爆発的な感染を引き起こす可能性は?
海外から感染者が入国し、国内の人にウイルスが移るリスクは存在します。しかし、中国の共同予防・抑制体制は、コミュニティにまでカバーしていて、住民もマスクを着用、人と社会的距離を保ったりしていて、しっかりとした防護意識と対策をしています。いざ発熱した場合、即時に診断され、必要があった場合、隔離措置を取っているので、再び爆発的な感染拡大は可能性として低いだろうと見ています。。
—世界の感染者数、いつピークアウトすると見ていますか。
いつピークアウトするかは、政府の介入次第です。各国の事情が異なりますので、世界全体の様子についての予測は、とても難しいように思います。
海外の感染の震源地は欧州でした。イタリア、スペインに加えて、ドイツ、フランス、英国も深刻になっています。さらに、現在、一番深刻な国は米国です。これまでの1週間、1日あたり1万例から2万例のペースで感染者が増え続けています。今の状況では、ピークアウトの時期を議論するのは、まだ時期尚早のように思います。
—中国で注目されている無症状感染者の及ぼす影響をどうご覧になりますか。
まず、無症状感染者はわけもなく突然現れたものではなく、主として2つのケースに見られます。1つは、感染状況の深刻な地域で、もう1つは、感染者と濃厚接触をした人です。
また、「無症状感染」の定義も二つあります。一つは、発病の初期のころにあり、まだ症状が現れていないが、後になって症状があらわれケースです。もちろん感染力があります。もう一つは、かなり長い観察期間が経っても症状が現れず、しかし、PCR検査では陽性反応が出る人です。こちらのケースの感染力については今、研究中です。現在は、隔離観察を行う戦略で対応しています。
私は、無症状感染者が大きな脅威になるとは思っていません。無症状感染者が全体に占める割合は全般的に見ると、低いからです。
—一度退院したものの、再び陽性反応が出た患者もいますが……
この場合、そのほとんどがPCRの一部分から陽性反応が出たもので、ウイルスそのものが再び検出されたことではありません。
ただ、感染再発の可能性、そして、症状は改善されただけで完治はしていないという二つのケースには注意する必要があります。本来は一度感染した後、体内に強い抗体ができた場合は、人に感染しません。
全般的に言いますと、再び陽性反応が検出された患者がもたらす感染拡大の可能性は、個人的には心配していません。
—新型コロナウイルスは、インフルエンザのように長く存在していくと見ていますか?
確かにそのような説があります。しかし、現在のところ、それを裏付ける十分な証拠はありません。これには、長期にわたる観測とデータ分析が必要です。
直近の新型コロナウイルスの感染は夏に、一通り落ち着くだろうと私は見ています。けれども、秋と冬に再発しないかについては、誰も言い切ることはできません。ましてや来年春のこととなると予測不能です。ただ、万が一再発していても、予防、早期診断と隔離を経験してきたので、現在のように、対応に慌ててうろたえるようなことはないようと私は見ています。
新型コロナウイルス感染症は、完全なる収束をただ待つだけではなく、生活や生産に影響を及ぼさないよう制御することが大事だと思います。
<新型コロナとの戦いでつながれた中日の絆>
花を愛でる徐舒さん
先週のこのコーナーは「マスクに思いを寄せて」と題して、日本の中国語会議通訳の草分けたる存在である神崎多実子さんのエッセーとインタビューをお送りしました。今週は、神崎さんにマスクを送った北京在住の徐舒さんの思いをお送りします。
徐さんは神崎さんの中学の担任教師である張先生のお嬢さんです。北京在住で、大学教師を経てファッションデザイナーとして活躍。定年退職後、野生動物の撮影が好きになり、北海道やアフリカなど世界各地で撮影旅行を続けてきました。また、乳がんの手術を受けたことがきっかけで、現在は北京の病院で終末期看護、ターミナルケアのボランティア活動も続けています。
徐さんにはお嬢さんが一人いて、今は東京でジュエリーデザイナーの仕事をしています。今年の3月以降、新型コロナウイルスの感染が日本でも広がり、徐さんは旧知の神崎多実子さんや日本にいる娘に「必要な方にも届けるように」とマスクを送りました。
新型コロナウイルスの感染が始まった後、最初は日本から中国へ、その後、中国から日本に支援物資が送られるようになりました。この中には、政府間、地方間、産業界同士のマクロの視点でのつながりもあれば、本日ご紹介したような、個人と個人のミクロ的な強い絆もありました。どちらも近き隣人であり、または人によっては、親戚や家族のような両国関係のありのままの姿ではないかと思います。以下は徐さんへのインタビューに基づいてリライトしたエッセーです。
マスクに思いを寄せて(下)
~徐舒さん:日本に送るマスクは 天国の母とのつながり
話は新中国の成立から間もない東北部の長春に遡ります。1951年、師範学校を卒業したばかりの母・張孟君はこの町にある「東北師範大学附属中学」の数学の教師になりました。
1979年、神崎多實子さんと張先生との再会
母が初めて受け持ったクラスには、日本人の生徒3人が編入されました。1953年まで、新中国の建設を支援するために留用された日本人技術者たちの子弟です。その中の一人が、今も親交を続けている神崎多実子さんです。私はいつも親しみを込めて、「多実子おばさん」と呼んでいます。
2015年夏、張先生を囲んでの集い、右1が神崎さん、右2が張先生、左1が徐舒さん
愛する母は、3年前の夏に他界しました。しかし、教え子たちは今も母のことを覚えていて、時折、父や私たち家族のことを気遣って連絡を取ってくれています。お陰様で、温かい思い出もたくさんあります。中でも、多実子おばさんは私の中では親戚のような方で、また、私と今は亡き母とを繋いでくれる存在でもあります。
今年に入り、中国で新型コロナウイルスの感染拡大が起きた後、多実子おばさんは直ちに、武漢支援に義援金を送りました。ウイルスは、その後、日本でも広がり、SNSなどで日本ではもうマスクが入手できない様子の写真を見て、とても気になりました。何とか中国でマスクを見つけて日本に送れないかとずっと考えていました。
そう思っていた時は、実は中国でもまだマスクが容易に入手できない頃でした。また、私もちょうどリハビリで入院をしていました。ただ、その間、友人が東京にいる私の娘宛てにマスクを送ってみたところ、無事届いたことが分かりました。
間もなく私は退院しました。帰宅後、さっそく多実子おばさんに連絡を入れ、体調のことや、マスクの有無を確認しました。その時、多実子おばさんは実に遠慮深そうに、「マスクはまだ何枚かあります。しばらくは凌げるので、わざわざ送ってもらわなくても良いです」とおっしゃいました。
その話を聞いて、私は次のように答えました。
「多実子おばさんには、マスクを多めに送ろうと思っているのです。多実子おばさんお一人のためではなく、おばさんを通してもっと多くの人にも配ってもらえればと思っています。災難を前に、助け合うことは私がやるべきことですし、天国の母もきっとそうしてほしいと願っていると思います」
「母の想いでもある」、その言葉が効いたのか、多実子おばさんはこれ以上断らなくなり、快諾をいただけました。
数日後に、「無事届きました」というメッセージと共に、多実子おばさんからは美しい花束と共に写ったマスクの写真が届きました。そして、数日後にまた連絡をいただき、「送ってもらったマスクは、同僚や友人たちに分け合ってきましたよ」、と。
舒さんからのマスクが届いた後、神崎さんから送られてきた写真
ほっとした私は、母の写真に向かって、「届けることができたからね」と合掌しました。
中日両国の人々が代々にわたって、友好的に付き合ってほしい。これは母と多実子おばさんの同年代の方たちがずっと取り組み続けてきたことです。母はもう天国へと旅立って行きました。しかし、私は母たちの目指すことに向け、微力ではありながら、力を添えることができることを嬉しく思っています。
マスクを送ること自体は、取るに足らないささやかなことに過ぎません。中国と日本の人々が仲良く付き合うことが、母と多実子おばさんのライフワークでした。今回、新型コロナウイルスの感染拡大で、私はやっとこのようなちっぽけな事をするチャンスに恵まれました。また、これと同時に、今回のことを通してリアルな世界で、母とつながることができたのは、私にとって何とも言えないぬくもりを感じ、素敵な思い出となっています。
中国と日本の間に起きた歴史は、もう歴史なのです。その中から教訓をくみ取る必要がありますが、今は平和と友好、発展に資する営みが必要でしょう。中日両国の代々にわたっての友好こそが、私たちが描くべき美しいビジョンなのです。
今の状況下こそ、中国と日本は経験を学び合い、助け合って、難関を一緒に乗り越えていくべきだと思います。
もっとも、口先だけで叫んでも役に立ちません。一人ひとり、力の及ぶ範囲で何かをやれば良いと思います。
マスクは、東京にいる私の娘にも送りました。受け取った娘は、同僚や友人、大家さんに分け合い、そして、近所のカフェにも持っていきました。「オーナーはとても優しい人なので、助けが必要な人のことを良く知っている。駅で通り過ぎていく人に配るよりも効果的よ」と娘は言いました。
どれもささやかなことに過ぎません。しかし、ぬくもりが伝わります。そうです。今、一番必要なものは、お互いのぬくもりと支え合いではないでしょうか。
中国で感染が拡大し始めた頃に、日本からとてもぬくもりのある言葉と共にたくさんのマスクや支援物資が送られてきました。
両国とも、無事乗り越えられるように。これが私の祈りです。黒い雲が過ぎ去った後、多実子おばさんのお伴として、中国にいる同級生のご自宅を一緒に訪問したい。また、野生動物の撮影に日本にも行きたい。静かな山奥の温泉に浸かって、ぼうっとしたい。心が落ち着く美しい思いとぬくもりを探しに、またそれを味わいに日本に行きたい。これが、今の私の想いです。
<徐舒さんの作品から>
<最近届いたお便りの抜粋>
★愛知県岩倉市・杁本直正さん
愛知県に緊急事態宣言が出されました。
突然ですが、私が主催する<第16回中国の放送局から収集した切り紙展>が今日、終了となりました。ビックリです。いつ休館になってもおかしくないと思っていましたが、とうとう来てしまいました。4月いっぱいはできると思っておりました。残念でなりません!明日から5月7まで臨時休館です!
私の戦いが終わってしまいました。思い起こせば3月に「アマチュア無線開局45周年記念展」をやり、4月から「切り紙展」となり、無線の後片付けをしたとたん切り紙展の展示となり大変でした。切り紙展に関しては、FM一宮に出演し、中日新聞の尾張版に掲載されたことは良かったです。また、貴局の火曜日、水曜日の番組でも取り上げて頂きありがとうございました。
4月1日から10日まで、6日の月曜日は休館ですので、賞味9日間になります。来場者数は50人位となりました。私としては、もっともっと戦いたかったのですが、場所がなくなってしまっては戦えません。以上報告させていただきました。
★高知県四万十市右山五月町・杉村和男さん
高知の桜は、ほとんど散ってしまいました。
ひと月前には、中国や武漢を応援する立場でしたが、今は逆に応援してもらう状況になりつつあります。高知県では感染者が急増しており、10日の報道にありますように、緊急事態の一歩手前まで、ひっ迫しています。
日本の場合、外国と違って、営業している店も有り、交通機関は動き、通勤している人々も大勢居ます。これで、感染を抑えることが出来るのだろうかと、非常に不安です。コロナウイルスを撲滅しようという目標に向かって皆の心が団結しておらず、行動がバラバラです。
今、世界中がコロナウイルスと戦っており、世界各国が情報交換して、協力して、一致団結して、この困難を乗り越えないといけません。個人個人の意識はもとより、国同士が励まし合い、やがて「雨降って地固まる」の諺のように、世界が仲良く、親密な交流が出来るよう願うばかりです。
★東京都大田区・三輪徳尋さん
長くて苦しい武漢市のロックダウンがようやく解除されるとのこと、まだまだ、緊張感を緩めることは難しい状況にあると思いますが、ようやく明るい日差しが戻ってきたようで、とても嬉しく思います。
日本も、感染症との戦いという「硝煙のないこの戦争」に本格的に参戦して、立ち向かわなければならないときになったことを受け入れなければならない……ウイルスは国境も人種も思想も考慮してくれないので、自由や権利などと語らずに、新型肺炎に有効で厳しい手段を取り入れ、団結して戦わなければならないのだと思います。……日本らしい周囲の人たちへの気遣い、配慮などが効果的に作用して、このまま感染の爆発がわずかで治まってくれれば……などと楽観的にごくわずかな可能性に望みを託したいと思います。
★名古屋・ゲンさん
4月4日清明節の全国一斉警報の音。もちろん日本のTVニュースでも聞きましたが、王小燕さんが北京の自宅で録音した短い警報には、中国全土の悲しみが凝縮されているようで、胸が詰まりました。でも「前へ進まなければならない」というのが、残された人間の使命なのですね。中国の皆さんは、本当によく頑張られたと思います。亡くなられた皆さんのご冥福をお祈りします。
80代半ばであるはずの神崎多實子さんのお声の力強さに思わず身を正しました。マスクをつけてマイクに向かっておられ、北京からのインタビューに答えておられる姿のルーツは、中国の恩師との出会いにあったのですね。
「天国からのプレゼント マスク」の短編は深い師弟愛や友情に育まれた長編でした。私は「緊急事態宣言」の対象外となった名古屋の在住ですが、CRIの放送を聴いて免疫力を高めていますよ。いつも感謝しています。
◆◆◆
この番組をお聞きになってのご意見やご感想、世界におけるコロナウイルスとの戦いに関する思いをぜひお聞かせください。Eメールはnihao2180@cri.com.cn、お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号 中国国際放送局日本語部】もしくは【〒152-8691 東京都目黒郵便局私書箱78号 中国国際放送局東京支局】までにお願いします。皆さんからのお便りをお待ちしております。