北京
PM2.577
23/19
1時間目 国際ウィンタースポーツ博覧会2019&第6回世界インターネット大会
担当:王小燕、斉鵬
北京の紅葉は見ごろを迎えました。現在から11月上旬まで楽しめます。皆さんがもし北京に来られる機会がありましたら、ぜひ香山公園や八達嶺長城など、紅葉の名所へ足を運んでみてください。
さて、今日の番組は最近いただいたお便りの紹介の後、「旬な話題」では最近、中国で開催されている2つのビッグイベントにスポットを当ててご紹介します。一つは北京で行われた国際ウィンタースポーツ博覧会2019(写真上は会場の様子)、もう一つは烏鎮で開催されている第6回世界インターネット大会です。
北京の「2つの五輪と関わりのある区」ってどこ?「中国インターネット発展報告2019」の内容は?今年で11回目を迎える「ダブル11」(11月11日)商戦、早くも足音が聞こえてきそうです。一体どのような見通しになりそうなのか、業界筋の予測をご紹介します。
2時間目 中国の伝統芸能に魅了された日本人~昆劇役者・山田晃三さんに聞く(下)
聞き手:王小燕
1991年から北方昆曲劇院の役者・戴祥麟さんに指導を仰ぎ、昆劇役者の道を目指してきた山田さん。これまでの約30年、昆劇を取り巻く環境に変化が起きたことを実感すると言います。2001年に、ユネスコから世界無形文化遺産に登録されたのを境目に、それまで公演も愛好者も少なかった昆劇はその後、「各大学にサークルができ、笛に合わせて合唱するのが聞こえてくるようになりました。
そうした変化を支えたのは、改革開放で少しずつ養われてきた経済力です。社会が豊かになるのにつれ、人々は暮らしに余裕ができ、伝統文化への関心も高まりました。ところで、こんな中、山田さん突然体調を崩して入院準備をしていた師匠から、突然重要なことを任されました。それは、「中国の子どもたちに昆劇の基本動作を教えてください」という依頼でした。
戴先生のところには、毎週土曜日に昆劇を習い小学生が集まってきますが、入院中の代役を外国人の山田さんに頼んだのでした。
「最初は本当にびっくりしました。そんなことは恐れ多くてできない、と。ですけど、師匠から『大丈夫、お前ならできる』と声をかけていただきまして、それで、恐れ多くもはじめました」と山田さんは振り返ります。
普段は厳しい言葉でしか話しかけてくれない先生ですが、「『ああ、信頼していただいているんだな』と嬉しかったですね。またそれ以上に、先生の期待に背くことはできないので、なんとしても代役としてしっかり教えないといけないと思って頑張りました」と山田さん。
「この外国人で大丈夫ですか」、最初は親御さんからは疑い深い目で見られましたが、模範動作をする時、「足がちゃんとおでこまで蹴りあがっていたら、もうそこに国籍は関係ありません。伝統芸能は本質的なところを教えるというのが難しいですが、基本的な動作は訓練して身につけるものですので、そこを認めていただけたのが嬉しかったですね」と顔を綻ばせました。
阪神淡路大震災があった1995年5月、神戸の南京町が企画した
震災復興イベントに出演した山田晃三さん(右)、演目は崑劇『挡马』(写真提供:山田晃三)
28年間の昆劇との付き合いを振り返り、心境の変化について山田さんはこう話します。
「昆劇を演じて、最初は舞台に立てる嬉しさを感じながらやってきました。けれども、今では勉強できること自体に喜びを感じています。脚本を何度も読んでいて、昆劇の歌詞の美しさを知る。動作の一つ一つの様式、動作、型にも意味があって、それに歌を乗せてどう演じていくか、もう自己満足の世界ですね(笑)。目先の利益などにとらわれず、自分の好きなことを地道に、静かに続けられる幸せを、昆劇に教えてもらったかなと思っています」
山田さんはこの秋、約30年になる北京での生活にピリオドを打ち、日本に本帰国しました。現在、大学で中国語や中国文化を教えながら、昆劇の普及活動を続けています。帰国後に中国で刊行された雑誌『芸術手冊』には、山田晃三さんの中国語による寄稿が掲載されていました。自分の昆劇人生を振り返り、締めくくりをこのように綴っています。
「芸術手冊」2019年号に掲載された山田晃三さんの寄稿
「役者の大変さは自分が稽古を始めてから、初めて身を以て体験できます。一つの演目、一つのしぐさを演じ切るために、どれだけの練習が必要なのか。観劇に行くと、足が少しぐらついたのを一生懸命にこらえて、ようやく踏みとどまることができた役者を目にしますが、それを見る度に胸に熱いものがこみ上げてきます。どれだけの練習をすれば、そこまでできるようになるかと思わず想像してしまいます。
自分の中国での暮らしは、昆劇の稽古を切り離しては語れません。色々思う通りにいかないこともありますが、そういう時は決まって稽古をしてやり過ごします。『夜奔』を最初から終わりまで練習でもすれば、どんなに不快な思いも吹っ飛んでしまいます。何か大変なことにぶつかった時も、私の脳裏におのずと蘇ってくるのは、林冲のこの台詞です。
“丈夫有涙不軽弾 只因未到傷心処”(男は涙を軽々しくはこぼさない。一生懸命にこらえるのは、涙をこぼして悲しむに値しないことだ思うからだ)」
昆劇との長い付き合いの中で養われた伝統芸能への鋭い感性と深い造詣は、今後も山田さんの人生で生かされ続けていきそうです。
【キーワード】
立ち方:丁字步、弓箭步
基本動作:拉山膀、起雲手、提甲式、順風旗、栽锤式
足の動作:正腿、十字腿、旁腿、踢腿、盖腿、后腿
腿功:飛脚、璇子、掃堂腿、跨虎、圆場步
把子功:小快槍、大快槍、单刀雑拌、鎖喉
【プロフィール】
山田晃三(やまだ こうぞう)さん
1969年神戸市出身。京都外国語大学卒業。
北京第二外国語大学での交換留学を経て、1993年から北京師範大学大学院に進学し、中日経済関係を専攻する。留学のかたわら、1991年から世界無形文化遺産である崑劇の稽古に取り組み、北方崑曲劇院の俳優戴祥麒氏、張毓文氏(国家級無形文化遺産伝承者、国家一級俳優)に師事、「夜奔」「問探」「刺虎」「借扇」「擋馬」「三岔口」「下山」「挑滑車」など多数の崑劇及び京劇を習得。
2009年~2019年、北京大学で日本語を教える。2016年2月、自らの中国論の集大成となる「北京彷徨 1989-2015」(みずのわ出版)を出版。
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