北京
PM2.577
23/19
春節が明け、ほぼ普段の状態に戻った北京から森です。最近、このつぶやきシリーズで「乗車体験記が面白い」との声が届いたので、その期待に応えます。市内の「ちょっとユニークな列車」ということで、万里の長城付近を通り3年後の冬季五輪会場の一つとなる延慶区に達するディーゼル特急に乗りました。
この列車は10年以上前から運行されています。本来は市街地の北京北駅出発でしたが、今は同じく五輪会場となる張家口までの高速鉄道建設のため出発駅が郊外に移されており、少し不便をきたしています。国鉄路線を走りながら地下鉄用のICカードで乗車でき、また運賃も格段に安く利用しやすい列車です。ただそのせいか車内は大混雑でした。
前日に雪が降り、雪景色の万里の長城を目当てにした観光客で一杯でした。外国人客も所在なさげに床座りしています。
満員の列車はやがて平野部から山間部へ入り、時速30~40㎞で急勾配を登ります。車窓から長城が見えてきました。
途中、雪に覆われた「青竜橋駅」でスイッチバックし、出発から約1時間20分で長城への登山口である「八達嶺」駅に着きました。
この駅でほとんどの乗客が降りました。寒風の中を長城に向かうようです。足元に気を付けて景色を楽しんで欲しいものですが。
ガラガラになった所で車内の様子を紹介しましょう。
上の写真は両側2人掛けの一等席、その下は2人・3人掛けの二等席ですが、料金は同じですべて自由席です。またビュッフェもあります。
奥に売店があり、手前がラウンジです。なお中国語ではビュッフェも食堂車も「餐車」と言います。ともに日本では残念ながらほぼ消滅しましたが。
出発から1時間40分ほどで終点の延慶駅に着きました。ここは北京市の北西に位置します。この駅は地元中心部から外れており、アクセスもやや不便です。この列車は実質的に万里の長城への観光客を対象としたものであり、この延慶と北京市街地を結ぶ主な交通手段は、列車ではなくこちらです。
観光バスに見えますが、これは市の路線バスです。ほぼ10分間隔で運転しており、帰りはこれを利用しました。所要時間は渋滞がなければ1時間30分以内で、列車より速いこともあります。
そして、そのバスの車窓から見えたのがこちらです。
建設中の北京―張家口の高速鉄道線です。今年末に開業予定で最高時速は350㎞、冬季五輪の際には重要なアクセスルートになります。
中国の鉄道は、これまでの貨物中心から旅客営業へとシフトしています。今日乗った区間も含めて、既存の路線は必ずしも乗客本位のものではなく利用上不便な部分もありますが、新たに建設する高速鉄道は地下鉄など周辺交通のアクセスも考慮されており、「住民の足」を目指しています。こうした取り組みを感じることも鉄道旅行の面白さと言えるでしょう。(森 雅継)