北京
PM2.577
23/19
6回目 ネット編
キーワード①
【旅行青蛙】(lǚxíng qīngwā)[固] 旅かえる(ゲームアプリ名).
「旅かえる」は、日本のヒットポイント社が開発した「放置系ゲーム」の一種で、プレーヤーは極めて受け身な操作しかできず、極限まで「自由剥奪感」の強いゲームになっています。最近はラジオを買うことができたり、音楽を変えることができたり、アルバムのページを買い足せたり、写真もレパートリーが増えたりと、継続開発の進んでいる様子が見て取れますが、操作できることは相変わらず限られています。
このゲーム、日本で開発されたゲームなのですが、なぜか中国のアップルストアでのダウンロード数が最も高かったという不思議なゲームとして有名になりました。その後、春先にIT大手のアリババグループにライセンスされましたが、その時点で既にネットでは「もうブームは終わった」と酷評されるほどの瞬間沸騰型だったことも印象深いものでした。
当時は孤独や疲れを癒すゲームと言われ、若い人々からは「旅に出た子供の帰りを待つ母親の心情を理解することができる」いう声も聞かれました。ですが、開発者のインタビューを読むと、このカエルは「旦那さん」をモチーフにデザインしたものだったようで、国が違うと捉え方も違うということを改めて感じさせる存在にもなりました。日本人と中国人は見た目が似ていることから、ともすれば考え方も同じように見えますが、意外なところでカルチャーギャップがあることを物語るいい例になったと言えるゲームではないでしょうか。
【播放量】(bōfàngliàng)[名]再生回数.
こちらはネット上の動画の再生回数を指す言葉です。この「播放量」の数は動画コンテンツの人気を計る基準にもなっています。
過去の番組でも言いましたが、業界内の人の話では、モバイル端末でも、PCでも、テレビでも、1動画の自動再生とユーザーのクリックによる再生がそれぞれ1「播放量」と計算されるとされ、その他にも、なんらかの理由で回線が切断され、再接続すると改めて1「播放量」が加わるという計算をするとされます。さらに、待ち時間に再クリックすると改めて1「播放量」が加えられ、つと連続テレビドラマになると、次回予告のビデオをクリックすることも、「播放量」として数えられるとされます。ですので、一人のユーザーがたくさん「播放量」を貢献できる、つまり当てにならない数値が飛び出す結果になるとのことです。
これは外国のサイトになると、その基準が厳しくなってきます。単純なクリック数ではまずカウントされず、本当に生身の人が見ているのかというチェックに通ることが必要になっています。つまり、不正へのチェックが厳しくなっているわけです。これは、広告収入と動画の再生回数に強い結びつきがあることから、厳格な基準を設ける必要があると言うことのようです。
中国では最近、多くのドラマやバラエティ番組が、その市場をテレビから動画サイトへと移しつつあります。そうしたプラットフォームで動画作品を評価する基準は、視聴率ではなく、「播放量」が用いられていました。しかし、その後、動画コンテンツを売っていく際に作品の人気を判断する物差しとして、単純な「播放量」だけではない、より全面的な判断をする傾向が出ています。
以前、本番組でこのキーワードを紹介した時は、9月の初め頃に動画サイト「爱奇艺」がサイト全体で「播放量」の表示を取り消し、その代わりにユーザーの関心度、インタラクティブ操作の頻度、コンテンツの人気度などを表示する、という方針を打ち出したという話をしました。その後、動画サイト「腾讯视频」も、今後は、新規会員をどれだけ掴んだかというデータを主な評価基準とすることを発表、ある意味ロイヤリティの高い会員の奪い合いへとその戦いの場が移されており、余計にコンテンツのクオリティを競うようになっています。
最近では、動画業界に興行成績情報を提供するプラットフォーム「猫眼专业版」も「实时全网热度(リアルタイムオールネットトラフィックチャート)」を評価システムに導入するようになっています。動画業界に、前向きで、信頼できる、多次元のネット・コンテンツ評価システムを導入しようとしているわけです。猫眼はデータ会社として色々面白い試みを続け、今、手元のアプリでも、現時点の興行成績をほぼリアルタイムで見ることができます。数字を扱う業界は何かと不正がはびこりがちですが、こうした業界各社のせめぎ合いの中で、より良い指標が生まれるようになってほしいものです。