北京
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2018年末特別企画 何かが変わったシリーズ
2回目 中国の変化が見えるキーワード―ー政治経済編
【命运共同体】(mìngyùn gòngtóngtǐ)運命共同体
この「命运共同体」は、2013年3月、習近平国家主席がモスクワ国際関係学院で講演した際、初めて提起したコンセプトで、それ以降5年間、この「构建人类命运共同体(人類の運命共同体の構築)」は中国外交の指針的コンセプトとなっています。
6月下旬、北京で開かれた中央外事活動会議でも、習主席が、中国の外交原則ともいうべき談話を行った際、「人類の運命共同体の構築を推進する」ことに言及しました。また「构建人类命运共同体」は去年の10月には『中国共産党規約』に、そして、今年の1月には『中華人民共和国憲法』にもそれぞれ書き込まれたほか、国連で発表したスピーチなどにも次々と盛り込まれています。最近では、「亚太命运共同体」などの言い方も出ていますね。
一部の海外メディアでは、人類の運命共同体の構築を推進することは、中国共産党が第十九回全国代表大会で確立した中国の外交思想の中でも最も重要な要素で、中国の外交政策を支える柱の一つとなっていると分析しています。
実はこれは非常に複雑なコンセプトで、マクロから見れば、この世界は昔からバランスをとりながらも一つの星の上で生きていますから、この考え方は「昔からあるもの」とも言えるのですが、ミクロでいうと、今度は「複雑な世界を一つにして豊かにしていく」という壮大な目標とも捉えることができます。
実際には、異なるコンテクストの中でこのコンセプトをどう解釈するかは、それぞれに微調整が必要に感じますが、世界中の異なる民族や異なる信仰、文化を持つ様々な地域の人の叡智を良い方へと集約することができたとすれば、世界全体の繁栄というのも夢ではないかも知れませんね。
【平台经济】(píngtái jīngjì)[名]プラットフォーム・エコノミー
「平台」は、英語のplatformから来たものですが、そもそも「壇上」や「(高い)足場」の意味を持つ言葉です。パソコン用語としてはそのままプラットフォームという言い方で使われ、インターネット用語としては、サイト、システムの意味でも使われています。日常では、活動の足場や舞台、環境、拠点、土台、基盤などを「平台」と表現することもあります。
さて、この単語の中の「平台」は、バーチャルあるいは実際に存在する「取引の場」を指して言ったものです。プラットフォーム自体は製品を生産するわけではありませんが、二者あるいはもっと多くの供給サイドと需要サイドの取引を成り立たせ、手数料や取引差額で利益を得ています。私たちが日常よく使っているアップルストア、アマゾン、それから中国ですとJD.comやTmallなどがこれにあたります。
このコンセプトが世に出たのは今年の全人代の『政府活動報告』でのことで、「大手企業、大学と科学研究機関のイノベーションリソースの開放を奨励し、プラットフォーム・エコノミーやシェア・エコノミーの発展を促進し、オンラインとオフラインの結合、産・学・研・用の連携、大中小企業の融合による起業とイノベーションの流れを作り、大衆による起業と万民によるイノベーションのアップグレード版を作り上げていこう」と謳ったことが、この「平台经济」というコンセプトを社会に広めることになりました。
日本でも昨今、平野カール敦士教授が「プラットフォーム戦略」という概念を広めたことから一般に知られるようになっています。これは様々なクラスのビジネスプラットフォームを広げていくことを言ったもので、ビジネスの世界では今後もこの勢いが止まりそうにありません。中国も今では国が丸ごとプラットフォーム化していますから、様々な国との間でプラットフォームを作ることに努力しており、その勢いは増すばかりです。ですので、このプラットフォームの考え方は、ビジネスの基本構造としてだけでなく、国家間の関係についても変化を与える考え方へと育ちつつあると言えるかもしれません。
中国はこれまで様々な商品を生み出し、それを世界各地に販売してきた実績があることから、沢山のノウハウが蓄積されています。この巨大なプラットフォームをハブにした経済活動はこれからもどんどん広がって行くでしょうし、それ自体がどんどん洗練されて、便利になって行くことが期待されます。中国の「一帯一路」構想も実は各国とのプラットフォーム作りを目指した構想ですから、今後も様々な国でレイヤーの異なるプラットフォームが生み出され、互いの経済交流を促す舞台になっていくことが期待されます。