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キーワード①
【王者荣耀】(wángzhě róngyào)[固]王者栄耀(おうしゃえいよう、ゲーム名)、 King of Glory.
この「王者栄耀」は現在、中国で最も人気のあるスマホゲームで、2015年に深圳に本社をおく騰訊(テンセント)社によってリリースされたものです。このゲームでは、プレイヤーが1対1、3対3、5対5のチームに分かれて、敵軍の陣地の最も奥にある塔を倒すというMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)というゲームのジャンルに属します。
さて、このゲーム内でプレイヤーが選択できるキャラクターは、『三国志』の項羽と劉邦や『西遊記』の孫悟空、また、詩人の李白、唐の時代の女帝・則天武后、思想家の墨子などを始め、マルコ・ポーロや宮本武蔵などの外国人も登場しますが、全てが中国のプレーヤーがよく知る存在ばかり。これらのキャラクターには、それぞれ戦士、盾、暗殺者、賢者、弓を射る射手、サポーターなどの技能や特長があり、チームの中でそれぞれに役割を果たします。なお、バトルはそれぞれのキャラクターの時代や国とは全く別の世界で繰り広げられ、この点を面白いと思う人もいれば、プレイヤーの歴史観を混乱させると言う人もいるようです。これは登場人物のもつ技能や、人物のキャラクター特性をコアにチームを結成していくことから起こる現象ですが、それぞれのプレーヤーが歴史上の人物になりきることができるのはゲームの世界ならではのこと。見た目の無茶苦茶さも、実は現実と非現実の違いを際立たせる役割を有しており、そうした「夢のごった煮」な状態も、プレーヤーを引きつけるのかも知れません。
そして、実はこのゲーム、今世界で最も稼いでいるゲームだと言われています。「日活」は8000万から1億のレベルを保っているということで、メインのストーリーは無課金でフルに遊べるゲームなのですが、それとは別売りのキャラクターのコスチュームなどのアイテムだけで1日1億5000万元を稼いでいるということですから驚きです。
これだけたくさんの人が遊んでいるゲームではあるものの、実はリリースされてからネガティブな評価が多く飛び交いました。というのも、スマホを持っていれば誰でもダウンロードして遊べることから、初期のプレイヤーに多かった未成年者がゲームに溺れてまったく勉強しなかったり、親のお金をたくさん遣い込んでしまったりする事件が頻発したのです。そして、最終的には未成年者に対する時間制限や実名登録制を実施するほどの騒ぎに発展しました。
スマホゲーム全盛の時代、ユーザーを大勢抱えるゲームメーカーほど、ビジネスとしての成長を追求する一方で、社会的責任感を持つことも求められる世の中になってきています。
キーワード②
阴阳师(yīnyángshī)[固](ゲーム名)陰陽師(おんみょうじ).
日本でも映画や漫画でお馴染みの「陰陽師」をそのまま中国語の漢字にしたもので、「網易(ネットイース)」社が2016年にリリースしたスマホ版バトルRPGゲームです。このゲームの珍しいところは、中国製にも関わらず、平安時代の日本を舞台に、安倍晴明が人間界と霊界の間で自分の記憶を探すというストーリー展開をする点です。
さらに、このゲームに意外さを添えているのは、日本の豪華声優陣が出演していることです。つまり、中国人向けに開発されたゲームなのに、登場人物は日本語で話し、画面上に中国語の字幕がつけられているのです。
日本の皆さんは不思議に思うかもしれませんが、これは中国の二次元愛好者にしかわからない「ツボ」ともいえる部分なのではないかと思います。ご存知のように、日本のアニメが大好きという人は中国に沢山存在しています。彼らはこれまでネット上で日本語音声に中国語字幕がつけられたアニメをたくさん見てきたことから、すでに耳が日本語に馴染んでいるわけです。更に、陰陽師は日本で作られた漫画や映像作品も存在することで先行イメージがあり、何より日本を舞台にしたゲームであることから、日本語の音声を載せることでその独特の雰囲気を作ることにも一役かっています。そしてもう一点、これらのアニメファンの中には、日本の声優のファンがかなりいるという点も考慮されています。大勢のファンにとって、その声優さんの声を聴けるだけでもゲームをダウンロードする意味があるというわけです。
マーケティングの角度から考えると、この企画者が何をどう考えて企画して、プロデューサーがこのようなリスキーな企画にどうしてゴーサインを出したかというのも興味深い点ですが、このチャレンジはとても成功し、今では数多くのファンがプレイしていますから、開発チームの達成感は非常に強いことでしょう。もちろん、ネットイース社も鼻の高いことでしょう。
さて、こうしたゲームに溺れることはもちろんあまりよろしくないのですが、中国の社会では、特に若者の間でゲームが一種のコミュニケーションツールにもなっています。少し昔の世代では家族が集まると麻雀をやる人が多くいましたが、今ではゲームを一緒にプレイする家族が増えています。日本にも家族そろって居間でゲームに興ずる光景が見られるように、非常に微笑ましい限りの光景です。スポーツでも、ゲームでも、メッセンジャーアプリでも、そして場合によっては仕事探しのアプリでさえも、今では世代を超えたコミュニケーションツールになっています。その意味では、こうしたゲームのアプリも人と人をつなぐプラットフォームとして、その存在に新たな意味あいが見出されつつあるのかも知れません。