11月2日はアメリカ大統領選の投票日ですが、イラク情勢はこの日も平穏ではなく、イラク国内の反米武装勢力は襲撃や拉致そして破壊行動を通じてアメリカ大統領選に最後の影響を与えようとしています。
バグダッドの中北部にあるイラク暫定政府教育省のオフィスビルの前で、当日9時ごろ自動車による自爆テロ事件が発生し、少なくとも6人が死亡し、20人あまりが負傷しました。この爆発で教育省のオフィスビルは著しく崩壊し、その近くにあった車の少なくとも10台が破壊されました。またアメリカ軍の車隊がバグダッドで自動車爆弾の襲撃を受け、アメリカ兵1人が負傷し、軍用車が爆破されました。イラク国民護衛隊の車隊が当日、バグダッド西の郊外で、道路側から爆弾の襲撃を受け、イラク兵少なくとも2人が負傷しました。報道によりますと、イラク中部の都市サマラで、1人のアメリカ兵が拉致されたということです。また、イラク駐在のアメリカ大使館のスポークスマンによりますと、武装勢力は1日夜と2日早朝に、バグダッド西部のあるサウジアラビア系の貿易会社に入り、1人の保安員を殺害した後、6人の職員を拉致し、その内、2人のイラク保安員は釈放されましたが、他のアメリカ人1人、フィリピン人1人、ネパール人1人、イラク人1人がいまも拘束されています。「アルカイダ」のザルカウィ師が指導している武装組織は2日、あるイスラム系のサイトで日本人人質の首をきる映像を放映し、かつ声明を発表し、「日本政府がドルで人質の解放の交換条件を出したが、『アルカイダ』の『聖戦の立場は揺るぎないものだ』」と述べました。
爆発事件、襲撃事件、人質事件のほか、イラクの石油のインフラ施設が2日イラク戦争後最もひどい爆弾襲撃を受けました。イラク北部の4本の石油輸送パイプラインが相次いで爆破され、特に当日夜、これまでにない大爆発が発生し、輸送パイプラインがひどく破壊され、5キロ離れた所からでも爆発による大火災のほのお立ちのぼる黒い煙が見えるとのことです。イラク北方石油会社の責任者は、「当日発生した4件のパイプラインの爆破事件はバイジにある最大の石油精製工場への原油供給を大幅に減少するもので、イラク国内の石油市場の供給に大きく影響するだけではなく、トルコを経由する輸出が再度中断された。これら破壊されたパイプラインを修復し、石油の輸出を回復するには少なくとも、10日またはそれ以上の時間がかかる」と述べました。
イラク駐留のアメリカ軍は、イラク中部のスンニ派反米武装勢力の根拠地ファルージャとラマディで空爆と軍事攻撃を行うと同時に、引き続きファルージャへ軍事力を集中し、最終的な軍事行動を準備しています。分析筋は、武力で問題を解決することは大きな政治的リスクをともなうものであり、ひどい代価を払うものとなる可能性があるとしています。アメリカ軍とイラク暫定政府がいつファルージャ問題を解決するかという決心を下すのは、主にアメリカの大統領選の結果によります。イラク戦争を起こしたブッシュ大統領が再選されると、ブッシュ政権は何の気兼ねもなしに強硬な手段を取ってイラクでのその目標を実現させようとし、ファルージャは大きな被害を免れることは難しくなります。もしブッシュ大統領のイラク政策を批判する民主党のケリー候補が当選したら、新しい政府は必ずイラクに対する政策を調整し、イラク情勢は新しい変化を見せるに違いありません。しかし、アメリカ軍がいつでもファルージャを攻撃するという情況の下で、この都市の30万人の市民は相次いで外へ逃げ出し、残りの数万人がアメリカ軍やイラク軍隊との決戦を準備しています。イラク情勢はこれからどう発展していくかは当面、非常に重要で敏感な時期にあるとのことです。
|