改革開放30年の最前線、広東省の旅は続く。東莞市から東へ76キロ、珠江デルタ地帯の東北端に位置するのが恵州市だ。二つの区と三つの県を合わせた常住人口は387万人。
ここでも、この30年の成長はすさまじく、GDPの伸びはなんと162倍、年平均の伸び率は15.2%を保ってきた。市域住民の年収平均は1万7000元、農民は5695元で、それぞれ60倍と35倍という具体だ。
住民の心を豊かにしているのは、お金だけではない。自然にも恵まれているのだ。中心部にある西湖。杭州にある西湖は、マルコポーロが絶賛して有名になったが、こちらの西湖は、元の名を豊湖といい、地元の人たちは「夕焼けと日の出は絶景ですよ」と胸を張る。
北宋の詩人・蘇東坡は、1094年、いわば左遷の身で恵州にやってきた。ここで暮らした3年間に、190にのぼる詩を書いた。西湖の美しさを讃えたものも多く、その詩碑が湖畔に建っていた。蘇東坡の気分になって、夕暮れの時の西湖を歩き、小舟に乗った。広さは杭州西湖に及ばぬものの、さわやかな空気をいっぱい吸い込んだ。
南海の大亜湾に面するのが恵東県だ。ここの海岸は中国で唯一の海亀の産卵地。国家級の自然保護区となっており、飼育センターではいろんな種類の亀にお目にかかれる。こんなにたくさんの種類があるのか、と驚かれるくらいだ。
湾の先は、深セン、香港。青い海原を見、潮騒を聞きながら、いっときを過ごすのもいいだろう。(文:吉田 明)
|