高まる『食』への安全意識
五輪の食品供給の準備状況を伺う
ーー大会サービス部飲食処の抗易処長ーー
北京五輪において、多くの人たちが関心を寄せる事項の一つが『食』の問題ではないでしょうか。去年は、さまざまな意味で、この『食』に関して考えさせられる一年となりました。中国国内でも、今、多くの人たちが注意を寄せる問題の一つとなっています。
大会期間中、各国から訪れる選手や役員、そして観戦客の『食』はどうなるのか。北京オリンピック組織委員会のサービス飲食課のAに伺いました。
この「組織委員会サービス飲食課」はメンバーが総勢14人。食品に関する規定の策定、研修指導などを担当しています。
北京五輪組織委員会大会サービス部飲食処の抗易処長にお話を伺いました。
<北京五輪開催中の「食」サービス概要>
Q:北京五輪期間中、どのようなサービスを提供するのか。まずその概要を教えてください。
A:93ヶ所で食事を提供します。内訳は、競技場31ヶ所、サブ競技場45ヶ所、選手村などの一般施設10ヶ所、空港などの交通施設7ヶ所です。このうち選手村、メディア村、IBC・国際ラジオセンター、MPC・メインメディアセンターでは、外資(国際的な飲食サービス企業ARAMARK)と国内企業(首都観光グループ)が提携してサービスを提供します。また競技場については、郊外の2ヶ所を除いて、入札を行ない、国内企業に担当をさせます。ほかの場所は、各区や県に一任します。食品の販売については、競技場内に「1000座席に1ヶ所」の割合で、軽食売り場を設けることになっています。
<食品企業はこう選定する・・・>
Q:具体的には、どんな要求を出しますか。
A:北京オリンピック組織委員会として、種類に関して要求を出します。むろん原材料を提供する企業は、国内でも優秀な企業でなければなりません。そして、必要な認定を得ている必要があります。例えば加工企業は、HACCP(食品管理方式の世界標準の一つ)の認定を得るべきです。
Q:コストについては、基準はありますか?
A:組織委員会としては、コストについては決めていません。原材料の提供会社とサービス提供会社を選び、双方で交渉してもらいます。提供される物品が五輪組織委員会の基準に達していれば、それでオーケーです。
Q:原材料の提供社を選ぶに当たっての要求はありますか?
A:まず北京オリンピックの公式スポンサーの原材料を優先的に使います。食品関係のスポンサーは9社あります。それが無理ならば、組織委員会で指定した企業の原材料を使います。また元々使用していた企業の原材料を引き続き使うことも許されます。要は、組織委員会の基準に達せればいいと考えています。
Q:スポンサーが限られていますが、スポンサーでは対応しきれない場合はどうしますか?
A:そんな場合は、他の分野の協力を仰ぎます。栽培、養殖に関する企業は農業委員会に推薦してもらいます。食品加工業は、品質監督局に選出してもらいます。物流と配送の会社は、北京市商務局が選びます。
<"アジアンフード"は3割>
Q:選手や役員などに提供する食事はどのようなものですか?
A:メニューに関して規定があります。少なくとも70%が西洋料理でなければなりません。残りの30%は中華、日本、韓国などのアジア料理となります。
Q:メニューは公開されていますか。
A:メニューは飲食業界にとって知的所有権が関わってきますので、公開できません。今後、大体のメニューを皆さんに分かってもらえる機会があればと思います。
<大会後につながる『食品安全』意識の向上>
Q:オリンピックを前にして、市民の「食品安全意識」も高揚しつつあると思います。こういった動きは、今後の中国にとっても、意味があるのではないですか?
A:はい。特に企業が食品安全を規範化しようという動きは、大きな意味を持つと思います。オリンピック期間中だけを重視して、それが終わったら、品質が落ちるということはありえません。企業は、オリンピックへの関わりをきっかけに、『食品安全』に向けて、努力を続けています。こういった企業一つ一つの意識が高まることによって、社会全体がよくなっていくと信じています。
選手たちの最高のパフォーマンスを生む原動力となるのが『食』。最も大切なことは『安全』。そして、美味しく、スタミナたっぷりの料理をおなか一杯食べて、素晴らしい試合を見せて欲しい・・・彼らを迎える現地の市民みんながそう思っています。そして、そのための各方面の努力が、今度は大会後、社会全体の食品安全につながると思います。
(取材:姜平、王小燕、李軼豪、記事:李軼豪)
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