中国は、国土の80％が農村で、総人口13億人のうち8億人が農民です。農村部と都市部の所得格差が問題となっている今、農村改革は急を要するテーマなのです。

（九連村の農家と住民）

　しかしながら、「新農村」が具体的にどういったものなのか、イメージすることができずにいました。そこで今回、安徽省の「新農村」のモデル村とされている、九連村を訪ねました。

　安徽省東部の蕪湖市から南西方向に車でおよそ２時間。繁昌県孫村鎮に位置する九連村は、総面積５．３７平方キロメートル、人口３１５４人の小さな村です。 安徽省のほかの農村と同様、田んぼや菜の花畑が広がるのどかな風景が広がっています。

（農家のキッチン）

　注目すべきは、この村の住民の平均年入。ひとり平均６０００元（日本円で９万円）は、繁昌県でもトップです。

　この村は、なぜこれほど経済状況が良好なのでしょうか。その秘密は、村で産業を起こしたこと。衣料・紡績業などを中心に、村には大小企業４１社が林立しています。これらの企業には、村人口の８５％が勤めており、さらに近隣の村から１２００人の出稼ぎ労働者を受け入れています。

（昔ながらのカマドはそのままに）

　村の中心部にある衣料品製造工場を訪ねました。村の女性たちが忙しくミシンを動かし、東南アジア方面に輸出するという衣料品を縫っていました。農村でありながら、農民は企業勤めもする。村を挙げて、いわゆる兼業農家システムを取り入れたことが、この村に潤いを与えているのです。

　利潤を上げることで、村のインフラ設備も整備されました。コンクリート道路はもちろん、水道やガス、電気も完備されました。ある農家を訪ねたのですが、鉄筋コンクリート２階建てのしゃれた西洋風の家でした。昔ながらのカマドはそのまま備えながらも、水洗トイレやシャワーもあり、非常に住み心地が良いとおっしゃっていました。

（村の産業のひとつ,衣料製造）

　以前は生活することさえ精一杯だった九連村の人々ですが、村が経済的に発展し、最近では精神的な余裕が生まれてきたといいます。村ではダンスなどのサークル活動も盛んで、人々の笑顔も非常に明るいのが印象的でした。

　中国では昨年農業税を廃止し、本格的に農村問題に取り組み始めました。その問題解決のヒントをくれるのが、九連村をはじめとする「新農村」モデル村なのかもしれません。

　（取材・文／末永由希）