天安門広場のすぐ東側にある「前門釣魚台賓館」の中には、隠れた漢方医療スポット「炎黄国医館」があります。友人の紹介をきっかけに、取材することにしました。CCTV辺りの釣魚台国賓館と違い、ここは門番の警備員に国医館へ行くと説明すれば、簡単に入れるのです。すぐ目の前は大通りですが、一歩敷地の中に入るととても静かな所です。
「ここは1903年、清の時代に西太後の指示で中米連絡所の事務所として建てられたものである。敷地全体は北京の伝統的な建物・四合院の拡大版で、今私達が見学している建物は四合院でいう客室に当たる。この建物の両側にも二棟あるが、風水にそって左が青竜、右が白虎と呼ばれる建物である。アメリカのブッシュ大統領の父親である元ブッシュ大統領や、日本の田中角栄元首相もここに滞在したことがある。1949年に新中国が成立した当時、初代の北京市長もここに住み、第一回北京市長会議もここで開かれた」と広報担当の馬玲さんは建物の歴史について紹介してくれました。
メイン・ビルの向こうには診療棟があります。そこで国医館の館長である陳文伯医師に国医館の歴史について話を聞きました。
国医館は1997年11月にオープンし、当時は一流の漢方医専門家を集め、政府の高官や外国の政府要人などに診療サービスを提供することが主な役目だったそうです。ここの医師たちは漢方医学の研究一筋30年以上という人たちで、このような面々を一堂に集めることはなかなか難しいことです。しかし、国医館は国からの支持を得ていたため、初代メンバーは北京でも有名な協和病院、北京医科大学、中国漢方学院などの教授陣や定年退職した30人ほどが顔を揃えたということです。
また、具体的な仕事内容について、陳館長は「国医館は海外にも診察サービスを提供するほか、アメリカ、日本、ドイツ、イギリスなど海外の医療機関との交流も行っていて、先日もイギリスのロイヤル病院の関係者がここを訪れたばかりだよ。また、国務院、中央軍事委員会などの政府要人を診察する。もちろん一般の人に向けての診療も行っている。その他にも有名病院で国医館の医師が専門家として診察に立ち会うこともある。国医館は一時、経営難で休業したこともあったが、中国の漢方医学の向上を目的に最近診療を再開した。外国は中医学にとても興味を示している。最近も針灸の研究をしているドイツの専門家が訪れ、色々交流した」と語ってくれました。
続いて、2階建ての建物の奥には漢方の生薬を処方する場所がありました。ここは「抓薬」と呼ばれる場所で、医師が書いた処方箋に基づいて、各種の生薬を調合する所です。たくさんの引き出しがついた大きな棚に囲まれています。これは漢方の生薬を収納する棚で、引き出しの外には漢方薬の名前が書かれています。部屋の真中には大きなテーブルがあり、計りのようなものが二台置かれていますが、これは「等子」という漢方薬を計るための計りです。
昔は生薬を調合してもらい、自分で煎じることが普通でしたが、火加減や入れる水の量などで、煎じた薬がだいぶ違ってくるため、なかなか手間のかかることでした。今ではあらかじめ煎じてもらうことも可能で、全自動の煎じ薬マシーンがあったのにも驚きました。
生薬を保存する倉庫にも入ってみました。図書館にあるような棚がいっぱいあり、棚ごとに薬の種類が記録された札がついています。この部屋はクーラー付きで、温度計も目立つ場所においてありました。医師の紹介によると、ここの室温は常に30度以下、湿度は45%から75%を維持し、毎日その記録も取らなければならないそうです。漢方薬には植物が多いため、温度と湿度の変化で、薬の性質に異常が起こる恐れがあるからだそうです。
街なかにある病院と違い、知る人ぞ知る場所にある国医館ですが、ここの家賃はなんと年7、800万元ほどかかるそうです。昔は政府高官のみに診療サービスを提供していましたが、現在は一般の人も主な対象として診療をしています。ここを訪れる患者は熟年の方が多く、会社経営などをするお金持ちが大半を占めています。また、診療だけでなく、健康なライフスタイルなどをテーマとした講座を中国駐在の各国大使館で定期的に行っています。
一般の市民から見て、一回の診察料は50元で、他の病院よりやや高いようです。しかし、漢方とは、体調を全般的に整え、長期的な効果があり、ほとんど副作用がないということで、月に一回か二回、自分の体調管理として、ここを利用すればなかなかいいと思います。
【北京炎黄国医館】
北京市前門東大街23号
電話:(010)65128601
FAX:(010)65234397
e-mail:yanhuang@35.com
HP:http://www.yanhuang.com.cn
交通:地下鉄2号線(環状線)前門駅まで。
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