(六)卓球王国・・再び
第43回世界選手権は34年ぶりに「卓球王国」に帰ってきた。1961年北京大会以来の中国開催。しかし、天津大会を前にした中国男子チームには大きなプレッシャーがのしかかっていた。過去3大会、中国男子代表はスウェースリング杯(団体戦優勝)と無縁。今回こそ、母国の観客が見守る中で、その世界チャンピオンを取り戻すこと、これはすでに目標ではなく、使命といっても良かった。
そして勝利のためなら、なりふり構わないガムシャラさが中国チームに戻ってきた。決勝戦にいたるまでの10試合。中国は5人の選手たちのオーダーを全て変え、誰が本当のエースかを分からせないようにした。全ては、決勝で当たることが確実なスウェーデンを惑わすためだ。決勝前日、李富栄団長と蔡振華監督は朝3時までスウェーデンの試合のビデオを見て、作戦を検討する。スウェーデンのカルソンに対しては、カットを得意とする新人の丁松を当てる驚きの采配。そしてトップは馬文革を出すことを決めた。オーダーは試合開始2時間前まで極秘とする慎重ぶりだった。
1995年5月8日、決勝の日。1200人の記者が、ビデオ、カメラ、紙とペン。ありとあらゆる手段で、心を揺るがす決勝戦を記録し、血沸き踊る"ホームゲーム"の雰囲気を描写、「卓球王国」が再び世界頂点に返り咲く神聖なる時を記した。
首脳陣の試合前の綿密な作戦が的中する。蔡監督の読みどおり、新人、丁松が見事にカルソンを破る。中国はこの新人選手の昇竜のような勢いにのって、一気に頂点に登りつめた。
さらに王濤・呂林組が男子ダブルス2連覇。さらにその王濤は劉偉とともに、初めての混合ダブルス3連覇を果たした。
第43回天津大会で中国代表は、第36回大会に続いて2度目の大会7タイトルすべて総なめにする「完全制覇」を果たした。"スポーツ界の奇跡"ともいえるこの快挙によって、中国男子は数年の衰退期を終え、再び中国卓球「全盛期」の到来を世界に告げたのだった。
第43回天津世界選手権(1995年5月1日ー5月14日)
中国のチャンピオン:
男子団体戦 女子団体戦 男子シングルス(孔令輝)
女子シングルス(鄧亜萍) 男子ダブルス(王濤・呂林)
女子ダブルス(鄧亜萍・キョウ紅) 混合ダブルス(王濤・劉偉)
第44回イギリス・マンチェスター世界選手権。リーグ戦で、中国が入った組には強豪チームがなく、逆にコンディションの調整には不利であった。そんな中、中国は、強豪スウェーデンと韓国を破って、決勝でフランスと対戦。両チーム1勝1敗で迎えた3戦目。中国・王濤とアイロワの一戦は白熱した試合となった。第1セットは王涛があっさりと取ったが、続く第2セット。稀に見る追いつ追われつの攻防となった。20対20のデユースから21対21、22対22、……、結局、最後は31対29で、ついに王涛が熱戦に終止符を打った。計10回のデユースを重ねた二人の集中力と粘りに観客たちは惜しみない拍手を送った。中国はこのまま男子団体をものにし、2連覇を果たしたのである。
第44回イギリス・マンチェスター世界選手権(1997年4月24日ー5月5日)
中国のチャンピオン:
男子団体戦 女子団体戦 女子シングルス(鄧亜萍)
男子ダブルス(孔令輝・劉国梁) 女子ダブルス(鄧亜萍・楊影) 混合ダブルス(劉国梁・ウ娜)
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