新作映画『千里走単騎(単騎、千里を走る)』は、張芸謀監督と高倉健とのコラボレーションということで、早くも話題を呼んでいます。今年10月の東京国際映画祭のオープニング作品としても公開される予定です。
監督はもともと高倉健のファンで、一緒に映画作りが出来る日を夢見ていたそうです。それだけに力の入った作品となっていますが、それに対して健さんがどんな演技でこたえているのか、本当に見ものです。
実は、作品のタイトル『千里走単騎』は、京劇の演目のひとつから取っています。日本でもおなじみの『三国志』に由来する話です。「劉備」の義理の弟である「関羽」が、「劉備」の妻子と共に宿敵「曹操」の手に落ちます。しかし「関羽」は、「劉備」への誠意を貫き通し、最後は「劉備」のもとへ帰還するというもので、『三国志』の中では最も感動的なエピソードの一つと言われています。今回の映画は、京劇『千里走単騎』がキーになっています。そのあたりも注目してみてください。
タイトルだけ見ると、なんとなく、「張芸謀お得意の、歴史と絡めた壮大なスケールの作品かな?」と思ってしまうんですが、実はそうではありません。
物語の舞台は、現代の中国と日本。高倉健演じるのは、「高田」という男性です。「高田」には、不治の 病に侵され余命いくばくもない息子がいます。その息子は民俗学者で、中国の伝統劇・京劇に心惹かれています。「高田」は息子を連れて、中国の奥地・雲南省を訪れます。
雲南省で過ごすうち、この父と息子の関係が変わっていくのも、この映画の見所です。ふたりの間には、永年の確執によって生じた心の溝ができています。しかし、経済発展とは無縁の、穏やかで美しい雲南省の街並みや、素朴で誠実な人々との出会いによって、「高田」の心は少しづつ癒されていきます。
張芸謀監督は、「この映画は、父と息子の関係だけではなく、人と人との結びつき、思いやり、愛情といった、普遍的なテーマを描いている」と話しています。
中国の都会では、「お金」や「ビジネス」が重要とされがちで、「人の気持ち」や「親子の絆」といったものがどんどん薄まりつつあります。でも、そうではない、もっと大切なものを表現したかったというんですね。
張芸謀監督の新作映画『千里走単騎(単騎、千里を走る。)』。主演は高倉健、共演は中井喜一、寺島しのぶ、そして、中国の有名俳優であるチアン・ウェンも参加しています。中国では年内、日本では来年、全国で公開予定です。
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