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エンブレム | 中国五千年の文化とオリンピック精神との結合を現し、世界中の人々が中国に来て、いっしょに踊るのを歓迎する印鑑のデザイン
【誕生までの過程】
2002年7月2日、北京五輪組織委員会は、全世界のデザイナーに呼びかけ、大会エンブレムの設計を募集。それからの3ヶ月間、1985作品が寄せられました。2回にわたって審査の結果、上位10点の候補作品が決定しました。トップに立ったのは、「1498番」でした。これが、中国伝統の「篆刻」をイメージした大会エンブレム『中国印』となりました。
この後、北京五輪組織委員会はさらに社会各方面の人々を招き、これらの作品に対する意見を求めました。この席でもやはり「1498番」に関心が集中しました。
「1498番」には「中国印」という正式な名称が与えられても、修正が加えられました。エンブレム原案には古代壁画の人物像の風格がありましたが、伸びやかでないところもあり、時代の息吹にかけていました。現在のエンブレムには、腕を大きく伸ばす、足のデザインを変えるなどの修正が加えられています。他にも、デザインの筆使いを太目にし、頭部と全身の比例を少し調整し、印章としての完成度や自然さを増すなど、細やか変更も多数加えられました。「中国印」の大きな修正は8回か9回に及び、繊細な修正は毎日のように行われたということです。
2003年8月3日夜8時半、北京の天壇公園・祈年殿で第29回オリンピック大会の大会エンブレム発表式典が開催されました。「中国印・躍動する北京」がそのベールを脱ぎ、世界に伝えました。
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「中国の印章 舞い踊る北京」を設計した郭春寧氏 | 【設計者に聞く】
「中国人にとっては、オリンピックはお祭りである。中国の伝統文化の中からどのような要素を取り出してこの祭典を表現するか。私が思いついたのは書道だった。中国文化を代表する漢字を用いて造型することだ。そして文字を載せる媒体は、中国の伝統ある印章でなければならない。」
設計グループの長の張武氏は「この図案は、造型上は他の作品より優れているようには見えないが、中国五千年の文化とオリンピックの精神との結合を体現しており、全世界の人々が中国に来て、いっしょに踊るのを歓迎するという理念が作品に溶け込んでいる」と述べています。(写真は「中国印 舞い踊る北京」を設計した郭春寧氏)
この図案の中に含まれる意味をもっと多く読み取る人たちもいます。
北京オリンピック組織委員会の劉淇主席は「印章を主体とする表現形式は、中国の伝統的な印章と書道などの芸術形式と動きの特徴を結合し、芸術的な手法で誇張、変形を加え、巧みに、前に向かって走りながら踊って勝利を迎える、動く人の形になり、濃厚に中国の持ち味を内蔵している」と述べました。
印章は4、5千年前に中国に出現し、淵源の深い中国の伝統文化の芸術形式です。それは現在も広く社会的に使用され、誠実と信用を表現するものになっています。中国の多くの書家や画家はみな金石の篆(てん)刻家でもあります。今なお、署名をする場合、依然として印章がよく使われます。
印章の主体は、基調の色彩に赤を選択しています。鮮やかな赤は、中国文化特有の情熱や喜びの雰囲気を伝えるものです。寓意に満ちた図形の、たとえば「京」という字のようなものは、祭典が行われる地名を表していると同時に、ゴールに向かう選手のようでもあり、オリンピック精神の追求を体現しています。また歌いながら踊る人のようでもあって、これは中国人のオリンピックへの憧れや、世界から来る賓客を迎える熱情と真心を表現しています。
北京オリンピックのエンブレムを見たIOCのロゲ会長は、「素晴らしい。詩的だ」と賞賛しました。彼はこのエンブレムが、中国の歴史と文化遺産を示し、前途の明るい偉大な国家の若々しい、生き生きとした精神を伝えている、と評価しています。(「人民中国」より2007年5月)
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