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施ガクと蛇
   2008-07-29 09:22:01    cri

 時は宋の時代、華庁県に施ガクという少年が住んでいた。施ガクはとても賢く、学問に励み、いつも夜遅く書斎を離れ床に着くという本の虫のような暮らしをしていた。

 ある日の夜、施ガクが窓の前で一心に本を読んでいると、外から怪しい風が吹き入り、明かりが消え部屋は真っ暗になった。施ガクは、これでは本は読めないし、もう夜半だから、休もうと思い、あくびをして背を伸ばし、書斎を出た。と、そのとき、ふと光るものが庭の草原でころころ転がっているのが見えた。怖くなった施ガクはその場に立っていたが、光るものはその場で光を失い、動かなくなったので安心した。しかし、いったい何だ?と恐る恐る近寄ってみたが、それはまた光だした。よく見るとそれは丸い珠であり、急に珠は施ガクの足ものに転がり、靴の上に載った。施ガクは足を振ってそれを振り落とそうとしたが、珠は靴にくっついてどうしても落ちない。しかたがないので、施ガクはそのまま書斎に戻り、明かりをつけてその物を見たが、それは透き通って見える真珠だった。が、そのとき真珠が靴から落ちたので施ガクがそれを拾い、これは珍しいと引き出しにしまい自分は寝に行った。

 次の日、施ガクが起きて書斎でいつものように本を読んでいた。施ガクは、官吏試験のことで頭がいっぱい。真珠のことは忘れていた。こうして半月が過ぎ、施ガクが試験を受ける日が近づいた。一方、かの真珠は引き出しの中で小さな蛇に変わっていたのだ。

 さて、その日施ガクは、かの真珠のことを思い出して引き出しを開けてみると、ピカピカ光る小さな蛇が這い出てきて施ガクの腕に巻きつき、遊んでいる。これに施ガクは驚いたが、蛇はとてもかわいいので、餌を与えるすぐにそれを呑み込み、そのあと施ガクの手のひらで寝てしまった。そこで施ガクは竹筒の節に孔をあけ、周りにも錐で小さな孔を開けて、中に蛇を入れると蛇はおとなしくそこを寝床にした。

 こうしてその日から施ガクは暇があるとその竹筒を持って郊外に散歩に行き、外に蛇を放して遊ばせ、帰宅すると、竹筒を窓の脇に置き、学問に励むという日々をすごした。もちろん、施ガクはこのことを家族や屋敷のものには黙っている。

 さて、官吏試験の日が来た。施ガクは、引き出しに残した蛇が気になり、多くの餌を残して屋敷を離れた。

 こうして主のいなくなった蛇は、さびしがって引き出しから出てきた。そこへ屋敷の女中が書斎の廊下を通りかかり、光る蛇を窓の外から見つけてびっくりし大声で叫んだ。これに蛇は怒り、どうしたことか、庭に這い出たかと思うと長さ三十尺、太さが二尺はある大きな蛇に変わり、両目を光らせ、口から長い舌を出し、そのあと蛇なのに竜のように空に舞い上がった。これが町の人に見えるのは当たり前。びっくりした人々は声を上げながら外に出て騒ぎ始めた。そのとき、一人の長いひげを生やしたじいさんがみんなに言う。

 「あれは、金甲蛇といって縁起が悪いやつで、奴を退治しないと町は大変なことになるワイ」

 と、じいさんは懐からガチョウの毛で作った扇子を取り出すと、それは大きくなった。そこでじいさんは扇子を蛇めがけて放り投げた。すると扇子は矢のように飛び、蛇に当たりそうになったが、これに蛇は尻尾を大きく振り、飛んできた扇子を粉々にしてしまった。これに人々は驚くが、かのじいさんは、「これはいかん」といって、その場から逃げ出した。これを空の蛇が見ていたのか、走るじいさんを襲い大きな口を開けて呑み込んでしまった。さあ大変、町の人々はこれを見て逃げ回るありさま。それでも、中には肝っ玉の太いのもいて、弓矢を持ってきて蛇を射落とそうとし、刀や槍で蛇を切ったり突いたりする。これに怒った蛇は、これらの者を大長い体で強く巻きつけたので、これらの者は目を白黒させて絞め殺された。そしてほかの蛇をやっつけようとした人々も同じように蛇に絞め殺されたので、これを知った県令は、下役人に命じて州の知事に助けを求めに行かせた。一方、蛇は不意に姿を消した。

 次の日、騒ぎを聞いた州知事が送ってきた数百の援兵が陣太鼓や銅鑼の鳴り響く中を蛇退治にとやってきたが、これを知った蛇は姿を現し、空に高く舞い上がると援兵めがけて襲いかかり、大きな尻尾を一振り。すると援兵らはばたばた倒れていく。慄いた援兵ら、かしらも含めて「これはかなわん」と一目散に逃げ出す。これに州知事は驚き、またも五百の弓手を差し向け、蛇に向かって一斉に矢を放させたが、いずれも蛇の硬い体に跳ね返されたので、弓手たちも逃げて帰った。

 一方、官吏試験に向かった施ガクだが、ふるさとで空をまう大蛇が大暴れしていると聞き、はて?と首をかしげ、試験が終わるといち早くふるさとに帰ってきた。そして屋敷に戻り、わけを聴くと書斎にいた蛇が大きくなって町で大暴れし、これまで多くの人の命を奪っているという。そこで町に出てみると、広場にある千年の大きな古木に金色に光る蛇がとぐろを巻き、まわりを槍や刀を手にした多くの兵たちが取り囲み、いずれもおどおどしていた。そこで施ガクが古木に近寄り、蛇を見ると体は大きくなっているが、それは確かに自分が引き出しで飼っていた蛇だった。それに蛇のほうも懐かしい主が来たのを知り、おとなしくしていた。これに施ガクは、近くで震えている県令にいう。

 「県令さま。どうか援兵を引き上げさせてくださいまし。私がかの蛇をおとなしくさせましょう」

 「うん。なんじゃと?そのほうがあの化け物をおとなしくさせるじゃと?」

 「はい」

 こういうと施ガクは古木に近寄り、蛇に手まねした。すると久しぶりに主に会ったのか蛇はおとなしく小さくなり、施ガクが持ってきた竹筒に入った。これを県令や兵たちは口を開けてポーカーンと見ていたが、不意に県令は、化け物を飼い、多くの人を殺させたという罪と、死んだ援兵たちの仇だといい、喚く施ガクの首を刃ね、なんと薪を積み重ねて死んだ施ガクを乗せて火をつけた。こうして施ガクの屍は焼かれたが、そのとき、ボカーンという音がしてかの竹筒が割れ、中の小さな蛇が飛び出し大きくなると空に舞い上がり、県令と兵たちをらんらんと光る目で睨んだ。これにびっくりした県令と援兵があわてて逃げようとしたが、蛇は口から火を吐き、逃げる県令と兵たちを焼き殺し、施ガクの首をくわえてどこかへとんでいったわい。で、その後、ある人が遠いところで生きた施ガクとみたという。

 そろそろ時間です。では来週またお会いいたしましょう。

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