「陳九どの、あんたの酒肴はすべて天から来たものでござろう。つまり、あんたは天に住んでいるお人。どうですかな?この私を一度天に案内してくれませんか?」
これに物乞いは「よろしい。ではしばらく目をつぶって」と答え、高玉成の手をつかむと宙に浮かび上がった。こちら高玉成は体が浮き上がり、上に昇っている感じがした。しばらくして物乞いが目を開けてもよろしいというので高玉成は目を開けた。すると近くに天の玄関らしい大きな門が見え、それは白い石で出来た門で、光り輝いていた。中に入ると大きな木があり、それには蓮の花とよく似た大きな花が咲いており、木の下には赤い服をまとった美しい女子が何かをしていた。この女子があまりきれいなので、見とれた高玉成が歩くのを忘れていると、高玉成に気づいた女子は顔を上げきつい表情でいう。
「何者じゃ。失礼な!ここに何しに参った!」
これに我に返った高玉成は、その場を離れようとしたが、なんと女子はそれよりも速く、もっていた木の棒を放り投げ、それが高玉成の背中に当たった。これを見た物乞い、慌てて女子に一礼して高玉成を連れてその場を離れた。こちら高玉成は、その女子の一撃で酒が覚めたのか、顔を真っ赤にして物乞いに謝った。
こうして高玉成が物乞いについていくと小さい雲が高玉成の足元に飛んできたので物乞いは、雲に高玉成を乗せるとこういった。
「高どの、ここでわしらは別れなくてはならん」
「ええ?ここで?」
「いかにも。これからわしが言うことを覚えておきなさい」
「ええ?」
「よいな、高どの。実はあんたの寿命はもう終わる。そこで明日朝、あんたは西山の山奥に隠れるのじゃ。そうすれは寿命を延ばすことができる。いいですな。明日、西山の山奥にかくれるのですぞ」
これを聞いて目を丸くしている高玉成を置いて物乞いは姿を消してしまった。こそして雲は、いくらかぼけてしまった高玉成を乗せ、家の庭におり、すぐ消えてしまった。
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