われに返った高玉成は、今さっき物乞いが言ったことを思い出し、家に入って妻にことを話した。これに妻も驚きどうしようと青くなったが、仕方がないので高玉成は物乞いの言うとおりにすることにした。
さて、翌日の朝早く、高玉成は食うものと着替えを持って西山にのぼり、へとへとになってやっと山奥にある谷間に来たが、疲れていたのかめまいがして足を滑らし、なんと深い谷間に落ちた。
「ああ!これで私もあの世行きか!」とあきらめていると、自分の体がふわりと浮いたようになり、ある大きな洞窟の前に下りた。そこで高玉成、恐る恐る暗い洞窟に入っていく。しかし、なかなか出口が見えない。
「なんということだ。私はこんなところで迷子になり、やがてはここで死ぬのか」と悲しくなったが、それでもで出口探して歩き続けた。やがで前のほうが明るくなったので、疲れを押し切っていくと、出口があり、そこを出ると仙境に入り、前を見ると三人にひげを生やした老人がいて、二人は囲碁を打ち、もう一人は横で酒を飲んでいた。高玉成が近寄ったが、三人の老人は顔を一度上げただけである。これにたまらなくなった高玉成がここはどこだと聞く。
これに酒を飲んでいた老人が答える。
「ここか、ここは仙境じゃ。で、おまえさん、いったいどうしてここに来たのかのう?」
「はい、実は陳九という方に西山の山奥に隠れろといわれ、谷間に来て足を滑らし、洞窟の前に下りたのです。こうして洞窟に入り、なんとかここにたどり着いたというわけです」
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