2006年、中国政府は毎年6月の第二土曜日を文化遺産の日と決め、文化遺産の保護を強化することになりました。先週の6月14日が、3回目の文化遺産の日でした。5000年の歴史を持つ中国では、豊かな自然や様々な文化財、それに伝統芸能などが数多くあります。
さて、歌や踊りといえば、無形文化遺産の枠に入りますが、中国では地方色豊かな歌劇「昆曲」、伝統的な楽器「古琴」、新疆ウィグル族の伝統芸能「ムカム」、蒙古族の長唄などがユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。
長唄はほとんど二つの句だけで成り立っているのです。自由奔放に、人間と自然との共存・共栄を歌っています。
蒙古族は長い歴史の中で、輝かしい文明を創り出しました。蒙古族の長唄は、遊牧民の文化に咲いたきれいな花といえます。草原に遊牧民がいれば、長唄が聞こえてきます。長唄は、草原の歌で、馬の背に乗って唄うものです。2005年11月、中国とモンゴルの共同申請により、長唄は、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されました。
では、ここで、モンゴル語でオルティンドーと呼ばれる、長唄について、ちょっとご説明しましょう。中国語では、長いに調子の調と書いて、「長調」といいます。蒙古族の独特の民謡で、息の長い発声をし、特に高音が強調されることが特徴です。しかし、長唄といいながらも、歌詞が長いというわけではありません。むしろ、歌詞は短いのが普通です。その代わり、一つ一つの言葉の発音の息が長く、ビブラートや伸ばす音など独特なこぶしを聞かせます。素人では、なかなかまねできない歌い方ですね。蒙古族が世世代代暮らしているあの広大な草原を連想すれば、この高音域を使いっぱなしの長唄が全然不思議ではなく、ぴったりの歌声だと分かると思います。なんといっても、広い環境で遠くにいる人にも聞かせるためには、高い音域の歌でなければ無理ですよね。
私も去年チベットに行ったときに、このことをつくづく感じました。チベット族の歌も蒙古族の歌と同じように高音が多いんです。人の多い都会に育った私たちには、こんな歌がどんなに好きでも、都会の中ではなかなか歌えるものではありません。そんな雰囲気がないですからね。でも、あのような天が高く大地の広いところに行くと、逆に普段よく口ずさむポップスなどは歌えなくなり、自然とチベット族や蒙古族の歌を歌いたくなります。
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