3月20日は、中国、日本いずれにとっても春分の日です。一方、この日を"春節"として迎えた少数民族がいます。中国の最も西にあるパミール高原に暮らしているタジク族です。
タジク族の総人口はおよそ4万人です。主に新疆ウイグル自治区の南西部に住んでいます。言語はインド・ヨーロッパ語系、イラン語派、パミール語分支に属するタジク語です。「タジク」は民族の自称で、「王冠」の意味です。ほとんどはイスラム教を信仰しています。
西暦2~3世紀、新疆タシュクルガンあたりにチェパントという国が現れ、その国の人たちが中国のタジク族の祖先だと考えられています。
タジク族の先祖は、一年を春と秋の二つの季節に分けていました。春は、一年の新しいスタートです。まだ遊牧生活を送っていた時代に、春の移動を行う前に、かならず盛大な祝典を開催しました。そして昼と夜の長さが同じとなる春分の日を春節としてきました。
この日は、村の長老がみんなを率いて、家々を訪れ、新年の挨拶をします。家の主人は、小麦粉を手につかみ、長老とお客さんの肩に乗せます。新しい年の豊作を祈るのです。一行がこの家を離れるとき、主人は氷雪を溶かした水をあちこちに撒いて、身の回りのほこりや「過去」を洗い清めて、一年の平安を祈ります。
その十日後、タジク族は「氷を溶かす」作業を行います。朝早く、村人がそろって食べ物を持って野外に集まります。お年寄りは、若者たちを連れて、山の麓の、まだ凍結している溝に土を撒き、氷が解けるのを促します。解かした水を田んぼに引いてから、種を撒きます。
これらの農作業が終わった後、みんなで食事をしながら、おしゃべりをします。馬に乗ってボールを打つスポーツ「馬球」などが男たちの楽しみです。 (文:藍暁芹)
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