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剣の道
   2008-02-05 16:35:47    cri

 今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。

 今日は清の時代に江蘇の淮陰にすんでいた百一という人の書いた「壷天録」という本から「剣の道」というお話をご紹介しましょう。

 童子傑は剣術に長けており、その剣は化け物をも殺せるという、しかし、それを信じる人は少なかった。

 ある年の夏、童子傑は剣を背に山東に修行に向った。途中、一人の商人と道ずれとなったので、童子傑は、自分の剣のことをほめ始め、「私のこの剣は、大勢の敵を一度の切る伏せることはできないが、化け物なら一刀の下に切り倒せますのでねえ」という。

 これを聞いた商人、その剣にかなりの興味を持ち始め、考え始めた。というのは。もう少しでつく済南の町外れに大きな空き家があり、それがお化け屋敷だとうわさされているのだ。そこで、商人は、童子傑という人物とその剣術を試したくなり、そのときはこのことは口に出さずに黙っていた。そして午後に済南に入ると、童子傑と同じ宿に泊まった。夕食時に童子傑が酒を飲んで飯を食い終わったのを見た商人は童子傑の寝る部屋に行って言い出した。

 「旦那、日が暮れたというのに暑いね」

 「そうだな」

 「どうです。私はこの町の涼しいところを知ってますから、そこへ出かけようじゃありませんか」

 「すずしいところ?」

 「ええ、涼しくて面白いですよ」

 「ふーん!じゃあ、宿にいてもつまらんから、行ってみるか!」

 「へい。でも旦那の大事な剣を忘れないように」

 「うん?剣を持っていくのか?」

 「へえ。面白いことがあるかもしれませんよ?」

 これを聞いて童子傑はいくらか首を傾げたが、自分は剣術使いなので、あまり気にせず、黙って剣を背負い商人と出かけた。

 やがてその涼しいところに来たが、そこは屋敷だったので童子傑は商人を見た。商人は知らん顔して屋敷に入っていく。そこで自分も入っていった。

 「あれ?おかしいですね。こんなに大きな屋敷なのに、門番も下男もないみたいですね」

 「そうだな・・」

 「旦那。この庭で待っていてください。私はこの屋敷のものを探してきますよ」

 商人は、童子傑が答えないうちに、玄関の外へ飛び出し、意地悪そうな笑い顔浮かべて、懐からもってきた鍵を取り出し、玄関の外からそれをかけ、どこかへ行ってしまった。

 こちら童子傑だが、かの商人を待っていたものの、なかなか戻ってこないので、玄関のところに行ってみるとなんど外から鍵がかかっていた。

 「ふん!つまらんやつめ!私を試そうというのだな!まあいい。暇だし、この屋敷にどんな化け物が出るのかこの目で確かめてやるわい」

 と、童子傑は気を取り直し、応接間らしい部屋に入ると、明かりをつけて部屋を見回したが、怪しいところはなさそう。それに夜には酒を飲んだこともあり、いくらか眠くなってきたので、この部屋の椅子を幾つか並べ、きれいに拭いたあと、明かりを消して横になり寝てしまった。

 さて、しばらくして庭のほうでカタカタと音がするので、童子傑は目を覚まし、剣を抜いて窓を開けて庭を見た。すると、月の明かりの下、一尺あまりの丸々太ったものがぐるぐる回っていたので、童子傑はばかばかしく思い、「こら!静かにいたさんか!」と怒鳴った。すると、その丸々と太ったものは不意に姿を消し、松明がともったかと思うと、背の高い大男が戸を蹴り開けて応接間にどかどかと入ってきた。そのとき、消してあった明かりが急についたので、童子傑はその男を見てびっくり。それは黄色い顔をしたどんぐり目の化け物で、全身に緑色の毛が生えている。

 これには童子傑ぎょっとした。だが、足が震えるのを我慢して剣を抜き、一応は構えた。すると化け物がケケケッと笑い出し、その声が大きいので、部屋が揺れだし、天井から土のかけらがぼろぼろと落ちてくる。

 「ふん!お前の剣では鶏しか殺せん!なんだと?化け物なら一刀の下に切り倒せるだと!!」

 これをきいた童子傑は、驚きのあまりに剣を落としてしまった。このとき、庭から七何から動く気配がした。これを耳にしたのか、かの化け物はふと姿を消したので、童子傑が剣を拾うのも忘れて突っ立っていた。すると庭では明かりを手にした十数人の女子が現れ、その真ん中からきちんとした身なりの中年の婦人が静かに部屋に入ってきて、応接間の真ん中にある席に座った。

 これを見た童子傑は、慌てて跪き一礼した。すると婦人が言う。

 「お前はなんですか?人の屋敷に黙って入り込み、この応接間で寝てしまったりして」

 「こ、こ、これはどうも失礼したしました」

 「あまり勝手なまねをするから、先ほどの化け物たちがお前を脅したのですよ」

 「ど、ど、どうも。お許しください。私は恐ろしさのあまり、剣を落としてしまいました」

 「ふふん。お前はまだ正直者ですね」

 これをきいた童子傑は、先ほどの化け物はこの婦人を怖れていたようだが、女子にいったい何ができると思い、相手が隙を見せているときに、すばやく剣を拾い、婦人めがけて突き出そうと思ったとき、婦人はにこっと笑っていう。

 「お前も大胆不敵な奴ね。正直者だから剣術を教えようと思っていたのに、この私を剣で殺そうとは!おろかな!」

 これに童子傑は首を縮め、黙ってしまう。

 「私を殺す気なら、殺して見なさい。さ、私の首を切り落とすのですよ」

 婦人はこういって首を差し出し「もし、殺せなかったら、お前は死ぬのですよ」と笑いながらいう。

 これに童子傑はまたも驚いたが、どうしたことか、両手が急に重くなり、また剣を落としてしまった。

 「お許しくださいませ。もう変な考えは持ちませぬ」

 「そうでしょうね。お前は生意気なところはあるものの、まだ救いどころがあります。わたしは剣仙の一人ですが、この屋敷では化け物が悪さをしていると聞いてその退治にきたもの。いまさっきの化け物は、実は私の弟子が扮したのです。お前は珍しい剣を持っていると聞いたので、お前を試しただけのこと。お前はその剣を持っているにもかかわらず、腕はたいしたことはありません。だから、私が教えてあげようと思ってこうしてやってきたのです」

 これには童子傑は、頭が上がらなくなり、また一礼した後、「お師匠さま。どうかお願いいたします」といって土下座した。

 そこで婦人はにこっと笑ったあと、剣を見せなさいといったので、童子傑はさっそく剣を拾って婦人に差し出した。剣を受け取った婦人は、しばらく品定めをしたあと、「これは道家の剣じゃ。神の剣のようにいろいろな変わった技は使えないものの、確かに化け物だけは退治できる。しかし、お前の使い方が悪い、まだ未熟じゃな」と静かに言う。

 「では、その剣の使い方を教えてくださいまし」

 「まずは、正々堂々と相手と渡り合う気持ちをしっかり持つことじゃ。そうしてこそ、邪道を打ち負かすことができる。また義を重んじて、強い者をくじき、弱い者を助ける心構えがしっかりしていてこそ、その得物がものをいうようになる」

 これを静かに聞き入っていた童子傑が何度もうなずいたのを見て婦人は、剣を手に立ち上がり、庭に出て後からおとなしくつい出てきた童子傑に剣術を教え始めた。で、時は夜中だというのに、あたりは昼のようにはっきり見えたので、童子傑は一心に教えを請い、必死になって剣を振るっている。

 やがて東の空が明るくなり始めた頃に、婦人はこれでよしというと、横で控えていた弟子に小さな袋を出させ、それを童子傑に渡していう。

 「よいな。私は仙境に暮らす身ゆえ、お前とはそう容易く(たやすく)会えるものではない。お前はこの袋を持って天下の化け物をこの袋に中に収めるのじゃ」

 「え!?この袋に天下の化け物を?」

 「そうじゃ。いまのお前ならできよう」

 「は、はい。わかりました」

 「そうじゃな。十年後に私は武当山の上で待っておるゆえ、袋を持って私に会いに来るがよい。お前がどれだけやったか見てみよう。これから剣の道を究めなさい」

 「お師匠さま。わかりました。十年後に私は必ずお師匠さまに会いに行きます」

 これを聞いた婦人は、やさしい微笑を残し、多くの弟子たちと共にその場を去っていった。

 さて、夜が明けて童子傑が、すっきりした気持ちで屋敷の玄関を出ると、昨日の商人が冷やかし顔で外に立ち、「昨夜はどうでした?」と聞く。

 童子傑はほんとはいくらか腹を立てていたのだが、よーく考えてみると、この商人のたくらみのおかげで、自分の剣術が上達し、素晴らしい師匠にも会え、また懐には化け物を詰め込む袋まであるのだから、ある意味では喜ぶべきだとおもい、ニコニコ顔で商人に応えた。これには商人は不思議な顔。そんなことにはかまわず、童子傑は宿に帰ると支度をして、一人で旅を続けた。

 そのご、童子傑は道士となり、剣術の修行に励み、民百姓のためにたくさんの化け物などを退治したが、金は少しも取らなかった。

 ある日のこと、揚州のある女子が化け物にうなされ、重い病にかかり死にそうになっていた。これを聞いた童子傑は、その女子の部屋には入らず、なんと遠くの川辺にやってきて、化け物が出てくるのを待った。夜になってその顔の化け物が川面から姿を見せたので、童子傑は剣をその化け物に投げつけると、剣は化け物のお腹に刺さり、そこから臭い水が流れ出し、そのうちにその化け物は、童子傑が口を開いて待っていたかの袋に吸い込まれてしまった。すると、かの女子の病はよくなったという。

 また、ある家では狐につつまれたというので、童子傑はその家の玄関で剣を抜き、屋根に上がって「えい!」と一振りすると、キャンという鳴き声と共に一匹の狐が屋根から下に落ちた。そこで童子傑がかの袋の口をあけると、狐はその袋のに吸い込まれていった。

 この袋は長さが約二尺あるだけで、大きな化け物などがどうして中に入ったのか分からんと、これを見ていた人々は首を傾げるばかり。

 のちの乾隆帝の時代に、童子傑は師匠に言われたとおりに、武術の聖地と言われる武当山にのぼり、二度と世間には戻ってこなかったという。

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