では次に「この世で一番偉いのは」です。これは昔の話「ネズミの嫁入り」からです。
「この世で一番偉いのは」
あるところにすむネズミが、娘が丁度年頃なので、嫁に行かせることにした。で、ネズミは考えた。
「わたしの娘は、賢く、器量もよいので、いい婿を見つけないとな。そうだ、この世で一番偉いもののところへ嫁入りさせよう」
こう思ったネズミは、腕を組みながら外へ出た。で、丁度その日はよい天気なので散歩することにした。
「今日は暖かいなあ。いい気持ちだ。どうしてこんなに暖かいんだろうなあ」とネズミは空に出ているお日さまに気がついた。
「そうだ。明るく暖かいのは、お日さまが出ているからだ。お日さまは偉い。うん。この世で一番偉いんだな。お日さまに勝てるものはいない」
ここまで考えたネズミは、お日さまに話しかけた。
「お日さま、こんにちは。私はネズミでございます」
「おお。お前がネズミか。わしに何の用だね?」
「お日さまは偉いんだね。もしお日さまが出てこなければ、この世は暗闇で寒くなるからね」
「ははっは!そうでもないぞ。わしはもし雲が出てきたら、雲にさえぎられ何もできなくなる。お前は曇り空の時を思い出してごらん。それに雲は雨を降らすこともできるしなあ」
これにネズミが考えていると、なんと大きな雲が出てき始め、お日さまは雲に隠れ見えなくなってしまい、あたりは暗くなり、これまでの暖かさはなくなった。
「うわ!ほんとだ。お日さまより雲のほうがすごいや」とネズミは今度は雲に話しかけた。
「雲さん!わたしはネズミですが」
「なんだい?ネズミか」
「あんたはすごいね。これまで出ていたお日さまを隠してしまい、あたりを暗くしたんだから。それに雨も降らすことができるんでしょう?この世で一番偉いんですね?」
「一番偉い?そうかなあ。実は、わたしは風がきらいでね。風が出てくれば、吹き飛ばされてしまうんだ」
「え?本当ですか?」
「ああ。うそじゃない」
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