その後、雲は黙ってしまい、なんと雨が降り出したので、ネズミはあわてて家に帰った。そして昼過ぎに雨がやんだので、ネズミはまたでかけた。すると今度は風が出てきた。風があまりにも強いので、ネズミはあわてて近くの木にしがみついた。そして雲が自分に言ったことを思い出し、空を見ていると、雲はほんとに風に吹かれ、西の空の方にどんどん流れていく。
「ああ。ほんとだ。雲は風に吹っ飛ばされていく。風ってすごいんだ、この世で一番偉いんだ。やっぱり上には上がいるなあ」
ネズミは早速、風に声をかけた。
「風さーん。こんにちは。わたしはネズミですが」
「何だよ、ネズミか!俺は忙しいんだよ。用があったら早く言え!」
「待ってくださいよ。あんたはこの世で一番偉いんだね。大空を覆っていた雲を吹き飛ばしてしまったんだから。あんたにかなうものなどこの世にはいないでしょう」
「なんだと?そうでもないぞ」
「ええ?違うんですか?」
「いや、実は、雲は軽いから俺は一度に吹き飛ばせるけどさ。重くて硬いものなら、いくらがんばっても飛ばせないんだ」
「へー!あんたにも飛ばせないものなんてあるんですか?わたしなど、この木にしがみついているから、こうしてあんたとお話できるんですが、もし手を離せば、どこかえ吹き飛ばされていますよ」
「それはお前らネズミが小さくて軽いからだよ。もし、重くてがっしりしたものだと、いくら俺だってどうにもできないさ!」
「重くてがっしりしたもの?」
「ああ。ほら!向こうに厚い壁があるだろう?」
「壁?ああ、あそこにね」
「あの壁なんか、これまでなんどもやってみたけど、びくともしねえや」
「ほんと?」
「ああ。おっと、こんなところでお前と話している暇なんかなかったんだ。俺は忙しいんだ。あばよ!」
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