「醜い?いやいや、酒好きの方であれば、そんなことは気にいたさぬ」
「そうでござります。では、拙僧のその弟子を呼び、あなたさまの酒の相手をさせましょう」
「それはよい。これからでもその弟子どのと酒を酌み交わしたいが」
「それは無理でござる。明日にでも、その弟子にここにこさせましょう」
「明日?では明日の昼までにここに来るよう伝えで下され」
「ははは、汝陽王さまも気の短いお方でございますな」
ということになり、葉静能は帰っていった。
さて、次の日の昼まえに、汝陽王の邸宅に一人の背が低く太っていて、顔形の醜い道士が玄関に現れ、一枚の名刺を出したので、門番がそれを汝陽王に渡した。
「うん?なになに?常持満とな?うん?葉静能の弟子と書いてあるな。ははーん、これが酒好きの国師の弟子か。よし!応接間に通しておけ。それに酒肴の用意をしておけよ」
こうして汝陽王が応接間に来ると、なんとも醜い背の低い一人の道士がいた。その道士は汝陽王が来たのを見てさっそく一礼した。
「拙僧は、葉静能の弟子で常持満を申します。師匠の命で汝陽王さまの酒の相手をしに参りました」
「おうおう。これはまっておりましたぞ。そこもとの師匠から、そこもとはかなり飲めると聞きましてな」
「いや、そんなに飲めるほうではござりませぬ。しかし、少しぐらいお相手できるかもと思いまして」
「何を申されておられる。さ、酒の準備は出来ておりますゆえ、さっそくあちらの部屋へ」
こうして常持満が、汝陽王について横の部屋にきてみると、そこには卓の上に数皿の美味しそうな料理が並べてあるほか、窓の下の床には酒が入った甕が多く並べてあるではないか。
「ははーん。汝陽王は聞いたとおりの酒好きだな。たいしたもんだ」と常持満は汝陽王が勧めるので遠慮がちに席に座った。椅子は二つだけで横に酒を注ぐ下のものが控えている。そして二人が向かい合って席についたのを見て、下のものがそれぞれの杯に大きな徳利から酒を注いだ。
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