「さあ、常持満どの。遠慮なく飲んでくだされ」
「はいはい。では頂きましょうか」というふうに二人の酒盛りが始まった。
こうしてそれぞれ数杯のんだあと、汝陽王が肴に箸を付けるよう勧めるので常持満がつまむとなかなかうまい。そこでまた酒が進む。しばらくして汝陽王が杯を置いて聞く。
「常持満どの。失礼だが、どちらの生まれでござるか?」
「拙僧でござるか。拙僧は・・」と常持満は答え、酒を飲みながら話も進む。そのうちに汝陽王はこの醜い酒の相手がかなりの物知りだということに気付き、そのうちに酒仲間から物知りと言われている自分でさえも、相手の話に追いつかなくなるのに気付いた。
「これは学識のある酒の相手を見つけた」と汝陽王は大喜び。しかし、そのうちに汝陽王は相手の言うことがわからなくなったのか急に黙ってしまった。これを見た常持満は、不意に話題を変えた。そして巷のうわさなどを話し始めたので汝陽王はますます気に入った。それに自分はそろそろほろ酔いになってきてるというのに常持満はこれだけ酒を飲んだというのに顔色一つ変えないでいる。
「これはかなりいける人物」と汝陽王がいくらか驚いていると、これを察したのか常持満が言い出した。
「汝陽王さま、あなたさまもかなりの酒飲みときいております。失礼ですが、どうでしょう。このような小さな杯では物足りないので、お椀に換えては?」
「おう。そうでござるな」と汝陽王は下のものにお椀を持ってこさせ、それに酒を注がせた。こうして二人はお椀で酌み交わし始めた。常持満はニコニコして話をやめず、これに汝陽王が答えている。そのうちに汝陽王はいくらか頭がふらついてきた。しかし、相手の常持満は、まだ顔色変えずに飲み続けている。汝陽王はそれでも何とか相手の話の答えながら飲み続けた。そのうちに常持満が言い出した。
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