「おお!そうかい。それはいい。おいらも金がなくて困っていたところだ」
「そうかい」
「じゃあ、その袋をおいらに渡してくれ」
「じゃあ、頼むよ、若いの」
と、爺さんは、担いでいた袋を賀さんに渡した。そこで賀さんがそれを担ぐとかなり重い。酒は入っているものの、かなり飲める若い賀さんのこと、「これは大丈夫だ」とおもい、「じゃあ、爺さんよ、行くぜ!」と歩き出した。
そして賀さんは歩きながら考えた。
「うん、かなりの重さだが、さっきの爺さんの濁した言葉だと、袋の中身は金に換えられるものに違いない。こいつを全部取り換えれば、きっとまとまった金になるぞ」
袋を担ぎながら考えて歩いている賀さんのあとを、かの爺さまは、知らん顔して歩いている。賀さんがこのとき後ろを振り返ったが、爺さんは月を眺めたりしている。
「いまだ!」と賀さんは、歩く足を速め、すぐに走り出した。そう、袋の中のものを自分のものにしたいと思った賀さん、その欲に駆られ、爺さんほっといて逃げ走り出したのであった。
これに気づいた爺さんは、「おい!おい!若いの!走り出してどこへ行くんだね!そこは右の道を行くんだぜ!左じゃないよ!」と叫ぶ。
しかし、賀さんは、左の道は自分の家に向う道だと見極め、また、こんな夜半に自分の顔も爺さんははっきり見えなかっただろうと思って、必死になって走る。やがて爺さんの声も聞こえなくなったので、賀さんは、酒も冷めたのか、一息つくと、しっかりした足取りで早足で歩き、しばらくして我が家に着いた。
そしてすばやく部屋に入り、一息ついてから袋を開けてみたが、なんと袋の中身は、大きな木の根っこだったワイ。
さて、かの爺さんは、いったいなんだったのでしょうね??
そろそろ時間のようです。では来週お会いいたしましょう。
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