今晩は、ご機嫌如何でしょうか?林涛です。
この時間は、「夜半の出迎え」というお話をお送りいたしましょう。
「夜半の出迎え」
いつのことかわからん。都からはるか離れた小さな村にばあさんと、息子夫婦が暮らしておった。
このばあさんは、幼いときに親から医術をかなり学んだということで、骨接ぎ、按摩、針灸、それにお産の世話もやり、これまでに一度もしくじったことはないという。ここら一帯の村人たちは何かあるとこのばあさんに頼みに来る。その上、ばあさんは病人からは一文もとらないというから、喜ばれるわけじゃ。ということは、このばあさん一家は、息子の野良仕事と嫁の針仕事、それに庭で飼っている数十羽の鶏に頼って家計を立てていた。
また、ばあさんは、はやり病で地元の鶏が多くやられても、自分の家の鶏は一羽も死なせたことがないという。鶏は大きなかごに入れて飼っており、息子が編んだものだった。
ある日、息子は夜になって鳥かごを編み終わり、飯を食ったあと疲れたといって床についたので、ばあさんと嫁も休むことにした。
と、夜半になって庭で音がしたので、これに息子が目を覚ました。
「うん?いったい何の音だ?」と息子はこっそり起き出し、上着をはおって庭に出てみると、月の光で表の木の戸が開いている見て不審に思い、さっそく戸を閉めにいった。そして振り返ると、うん?これまで庭の隅においてあった鳥かごがない!
「あれ?今そこにあったかごが急になくなったぞ?!」と目をこすってみたが、やはりなくなっている。驚いた息子は母を起こしに行った。
「かあさん!かあさん!大変だ!昨日編んだばかりのと鳥かごがなくなっているよ!」
「え?ほんとかい!」とばあさんは慌てて庭に出てきたが、確か鳥にかごがない。
「お前!表の戸はちゃんと閉めたんだろうね」
「表の戸が開いていたので、それを閉めて庭をみると、閉める前まであったかごが消えたんだよ」
「ええ?うそじゃないね」
「うそなんかつかないよ」
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