北京の酒「二鍋頭」ー3
禁酒宣言されたのは事実ですが、その後酒はやめませんでした。つまり始めは量をへらし、徐々にアルコール度が幾らか低い酒をのみはじめたんですよ。いけませんね。
で、ここで北京っ子がどのように「二鍋頭」を飲んでいたか一部ですがお話しましょう。これは今の北京じゃありませんよ。あれは1980年代。中国では改革開放政策は実施されたものの、その効果はまだはっきりと出ていなかったころです。当時私は放送局には通勤バスがあったのに、自転車で通勤してましてね。ですから退勤した後は大抵は家で飲んでいましたが、周に二回は外で飲んでから帰宅しました。つまり、帰る途中に日本で言う居酒屋に寄って一杯引っ掛けるわけです。そうですね。先ほど言ったようにものがいまのように豊富ではなく、各家庭の収入もいまよりかなり少なかった時期ですね。わたしの寄る店は限られていましてね。その店の前で自転車を止めておき、店内にはいるのですが、大抵はまだ5時半ごろ。ですから空いてます。で、わたしは、ばら売りの「二鍋頭」を比較的大きなコップに一杯買います。それ以上飲むと自転車で家に帰れなくなりますから。買い終わったら、早速、店の中が見渡せるような席を選んで、ピーナツ、それに「炒肝尖」という豚のレバーと韮のいためものを注文しちびりちびり飲み始めます。
空腹ですから酒は美味い。食事の後の酒みたいに酒を無駄にする飲み方は大嫌いですからね。さて、店にはお客が多くなり始めます。もちろん食事だけの客もいて、地方からの客もいます。でもそのような客は食事が終わったらすぐ席を立ってしまい。わたしのような呑み助はお尻が重く、しゃべりながら飲み食いするか、一人で何かを考えながら黙々と飲んでいます。また一部の若い人はその場の雰囲気を上げるための拳、これが中国語では「猜拳」とか「劃拳」などと呼びますが、日本のジャンケンとは違います。ほとんどが「二鍋頭」を飲んでいるようで、中年か年配は、静かに飲み、なめるように味わったり、一口含んで暫くしてから飲み込む人もいます。わたしのように酒をいちいち注ぐのが面倒だとコップで飲む人、または小さなグラスで半分半分飲む人、或いは杯でぐっと引っかける人。
なにしろアルコール度が高いものですから、大抵は幾らか苦い顔をして酒を喉に送り胃袋に収めるわけです。日本酒のようにぐいぐいやれる人はあまりいないようで、そんなことしたらすぐ酔っ払ってしまいますよね。
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