今回のぶらぶら歩きは江蘇省のある小さな町ーー宜興(ぎこう)をご紹介します。宜興、紫砂壷(しさつぼ)ファンなら誰でもが知っていると言われるほど有名なところです。
宜興を何度も観光したことがあるという聶中遠さんは、「宜興はとてもこじんまりとした町ですが、自然の美しさと人情味がある町です。景色が綺麗なばかりでなく、陶磁器のほか、書道も有名なのです」と話してくれました。
紫砂壷以外に書道でも有名だったとは知らないです。雑誌「旅行天地」の編集長李平さんは、「宜興の美術館は全国各地の有名な書道家と緊密な関係をもっています。去年1年間だけでも28回もの規模が大きな書道展覧会を開催しました。このような文化活動にも、多くの観光客が興味を示しています」と話してくれました。
宜興はやっぱり紫砂壷が一番有名です。でも、宜興市内をいくら歩き回っても紫砂壷の工場など見当たりません。いや、紫砂壷の工場どころか、紫砂壷の販売店などもみかけません。どうしてでしょうね?実際、紫砂壷を生産しているのは、宜興駅から車で更に30分ほど行った「丁蜀鎮」という田舎町なのです。ここで生産される『宜興紫砂の急須』の最大の特徴は、その土と製法にあります。その特別な土と特殊な製法でできた宜興紫砂の急須を使ってお茶を淹れると、渋みが抜け,非常に美味しくいただけるのです。
昔から煎茶の世界では、宜興の急須は最高の茶器として珍重されてきました。宜興紫砂とは、宜興市で焼き物に用いられる土のなかでも1トンの焼き物用の土から数百グラムしか取れないという貴重な土なのです。
この紫砂を使って焼いた茶器の中には、無数の気孔があり、これらが,お茶を淹れた際に,お茶の渋みを取りおいしいお茶が入るわけです。また、保温性も非常に高いのです。
現在では宜興紫砂の急須の多様なデザインや精密度に、世界でも美術品として高く評価されているだけでなく、中国では急須を作る作家にも芸術家としての国家資格を与えています。高級工芸美術家の創る急須は美術品として博物館に保存され、価格も数百万円以上の値段が付く程です。
宜興への行き方を紹介します。宜興へは通常上海から,電車で「無錫旅情」で有名な「無錫」というところまで行き,そこから,バスかタクシーで宜興市に行きます。上海から宜興へは高速バスも出ています。その他意外に近いのが龍井茶で有名な杭州からで,バスで1時間半くらいです。宜興市内から丁蜀鎮という村に行く必要があります。バスかタクシーで20分くらいです。
最近は宜興への日本からのパッケージツアーも出来ましたのでそれを利用するのもいいでしょう。
丁蜀鎮の町中で売っている急須はだいたいが偽物ですので、まずは第1・第2工場へ行きましょう。あるいは美術家と親しくなれば直接工房に行って見学がてら売ってもらうということもできます。
無錫から定期観光バスで行くと,途中で必ずよる道路沿いの紫砂器の販売店には、美術家ではなくその辺の農民がアルバイトで作った土産物ものしか売っていません。特にこのような店で、工芸美術家の作品として妙に中途半端な価格で売っていても決して手を出さないようにして下さい。美術家のものが欲しければ工場か、直接美術家から買いましょう。注意してください。
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