北京の花爛漫のシーズンは、一夜にして訪れることを感じます。朝、通勤の途中、道路の両側に満開になっている薄いピンクの桃の花が見え、びっくりしました。これらの木は前日まで冬の装いだったのに、一晩吹く暖かい風と共に蘇ったようです。今、北京の街は、桃のほか、白い木蓮や黄色い迎春花も咲き誇っています。そして、ずらりと並べた柳も萌黄色の若葉が芽生えています。中国ではこの景色を、「花が赤くなり、柳が緑色になっている」「花紅柳緑」と喩えています。この「花紅柳緑」は今、町並の冬の表情を春に変えています。
特に、町の中心部を通る数本の(7)お堀も魅力的です。幅20メートルぐらいのお堀の両側に、多くの柳や桃などが植えられています。これらはお堀の水を、空気と共に黄緑に染めているようです。あたかも都市部にある生きた山水画のようです。お堀の岸辺は、ほとんど敷石道となっていることから、春のそよ風を受けて、緑を楽しむ最高の散策場所に違いありません。北京市民に最も親しまれているお堀は、紫竹園と動物園までの水路、第二環状線を囲むお堀のほか、元大都の遺跡を流れるお堀などもあります。これから、ここで「花紅柳緑」を楽しむ人の姿が目立ってくるのではないかと思います。北京にとっては、突然訪れる黄砂は、喜びと驚きを同時に運んでくれる春の使者のようです。
皆さんがもし今ごろ北京にいらしたら、地下鉄から上がってくるとき、目いっぱいに咲いている薄ピンク色の桃の花に、思わず歓声を上げるかもしれませんね。
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