マケドニア外務省は17日、ギリシアがNATO・北大西洋条約機構への新規加盟を阻止しようとするため、ハーグにある国際裁判所に提訴するとの声明を発表しました。これに対して同じ日、ギリシア外務省が強く抗議し、長年にわたる両国の国名論争が再び過熱しました。今日の時事解説では、これについてお伝えします。
マケドニアの国名論争は早くも1990年代の初めに遡ることができます。1991年にマケドニアは旧ユーゴスラビア共和国から独立して、1993年に「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」の名称で国連に加盟しました。ところが、実際には「マケドニア共和国」の国名を使用していることでマケドニア州を領土内に有する隣国のギリシアの強い反発を招いています。1995年に、両国は関係正常化を目指す「臨時協議」を結び、マケドニアは国旗と憲法改正し、ギリシア領土に対して一切の要求がない意向を表明しました。しかしその後、国名論争に対する交渉が進まないことで、ギリシアは国名問題が解決するまで、マケドニアのNATO・北大西洋条約機構及びEU・欧州連合への加盟を支持しない方針を表明しています。
今回の国際裁判所への提訴は、国連による斡旋を切り離したことで、順調な解決につながる可能性が低いとみられています。一方、マケドニアのこのような硬直的なやり方は、バルカン半島地域をめぐって争っているアメリカとロシアの注意を引くことがもう一つの狙いではないかとされています。アメリカはマケドニアを含むバルカン半島の国々をNATOに加盟させることで、ロシアをけん制しようとする一方、コソボ独立やグルジア問題でアメリカとの関係が緊迫してきたロシアも、マケドニアなどの国を利用して西側諸国との対抗をも期待しているということです。このような情勢の下で、マケドニアが国際裁判所へ提訴し、アメリカとロシアの注意を引くことによって、交渉を自国にとって有利な方向へ導こうとしているとみられます。
一方、国名論争でギリシアが大きく譲歩することは考えられません。ギリシアの主権と領土保全に関係しているからです。マケドニアの憲法には、「隣国マケドニア人の権益を注目する」といった内容が記載されていますが、これはギリシア北部スラブ少数民族への干渉で、現ギリシア共和国内地域への領土的拡大をもくろむのではないかとギリシアは懸念しています。
事実上、国際裁判所への提訴に関して、マケドニア指導部内では意見の不揃いもありました。そのため、ツルヴェンコフスキー大統領は17日、国際提訴を決めたグルエフスキー首相がそれによるNATO及びEU加盟への不利な影響に関して全ての責任を負うことを明らかにしています。一方、ギリシアは国連が関与する下で、外交交渉で争いの解決を希望する意思も表明しているということです。
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