アメリカでは、サブプライム問題の深刻化に伴い、2つの政府系住宅金融機関の株価が急落し、政府は、7日、この2つの金融機関を公的な管理下に置くことを発表しました。これは悪化する米国の住宅市場や経済を支え、国際金融市場への影響を防ぐための積極的な支援だとみられています。今日の時事解説は、この支援策に至った経緯についてお伝えします。
この2つの政府系住宅金融機関は、「ファニーメイ」と「フレディマック」といい、両社は米国の住宅ローン残高12兆ドルの半分近くを保有または保証しています。このほか、国内外の中央銀行や金融機関が保有する両社の債券は、1兆3000億ドルに上ります。サブプライム問題が発生したあと、両社の株価はいずれも90%まで下落し、昨年の両社の損失は合計140億ドルになり、今後、損失はさらに拡大するとみられます。アメリカのポールソン財務長官は「2つの金融機関はあまりに大きく、世界の金融市場にも織り込まれており、どちらかが破たんすれば国内ばかりか世界中の金融市場に大きな混乱を引き起こす」と述べました。一方、「やむを得ない状態にならない限り、政府は介入しない」としてきました。
アメリカ政府のこの緊急支援策は、住宅市場を強化し、国際的な金融危機を阻止することが目的だとみられます。今年に入ってから、アメリカでは銀行10社が倒産し、投資者の信頼を大きく損ねることになりました。住宅価格が下落しつつあることによって、より多くの人がローンを返済できなくなり、海外投資者も2社の住宅ローン証券の急落を懸念しています。一方、巨額の債務を抱える2社は自力で資金繰りはできない状態にあります。これらを背景に、政府の緊急支援が差し迫っていました。さらに、財務省の委託を受け、コンサルティング会社のモルガンスタンレーが2社の財務について監査したところ、いずれも損失状況を隠蔽していたことが分かったことが、政府が直接介入する決断につながったものとみられます。
アメリカ政府の支援策は、具体的には2つの金融機関を住宅金融公社の公的な管理下に置き、安定を取り戻すまで運営すること、また、両社トップら現経営陣を交代させ、再建を担う新トップを指名することなどの措置を取りました。
救済策の一環として、財務省は2社に資金を注入すると発表しました。先ずは、両社の上位優先株を購入することにより、2社にそれぞれ10億ドルの資金を投入するとともに、今月の末までに、2社の住宅ローン証券を合計50億ドル購入する見込みです。アメリカ政府も資金投入を示していますが、具体的な金額は明らかにされていません。
ブッシュ政権のこれらの支援策は、2社の運営を安定させ、住宅ローン率の低下および住宅価格の低落阻止を狙っていますが、短期間には、住宅価格の低下を阻止することが期待できず、住宅ローンの返済ができなくなる人がさらに増えていくとみられます。アメリカ財務省高官によれば、2社は今後国有になるかどうかは、次期政権の決定によるということです。
時事解説、今日はサブプライム問題に対応し、アメリカ政府による緊急支援策についてお伝えしました。
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