フェンシングの五輪テスト大会を兼ねた世界選手権が18日、北京の国際会議センターフェンシング館で開幕。初日は男子の団体戦が行われ、日本は初戦で香港を44ー37で下したものの、2回戦はロシアに39ー45で敗れました。また中国は初戦、45ー19でカナダを破ったが、2回戦ではイタリアに屈しました。
同競技場は、近代五種のフェンシング会場でもあり、去年秋に一度訪れましたが、総当りで数多くの対戦が組まれる近代五種のフェンシングとは、会場の設営も全く異なります。今回は、かなり間をおいての開催でしたが、北京五輪本番では、非常に短時間での会場の組み換えが必要になるから大変でしょう。
会場設備の評判については上々のようです。メンバーの一人で、北京五輪出場を決めている太田雄貴(同志社大学)は『設備は間違いなく世界ナンバーワン』と絶賛しました。選手だけでなく、観客にとっても、フェンシングの臨場感をたっぷり味わえる競技場です。スタンドが非常に低く設置されており、ほぼ水平面で試合を観戦できます。フェンシングに最良の設備が整った競技場といえるでしょう。
日本のエース太田「金メダルを期待して欲しい」
後半の猛追にも関わらず、ロシアに惜しくも敗れた団体戦。汗びっしょりになって、引き上げてきた太田雄貴(同志社大学)は「だんだん悔しさがこみ上げてきた」と無念の表情を隠しませんでした。
格上のロシアを相手にトップで出た太田。当然、チームに勢いをつけて、次の千田、福田につなげる責任がありました。しかし、「気持ち、体力面で最高の状態になっていなかった。二人に申し訳ない」と太田。『勝てない試合ではなかった』という言葉が二度、三度と太田の口をついて出てきます。気持ちが十分に乗って、気合が入ってきたのは、5点差がついて、最後に登場したときでした。しかし、猛追は及ばず。
けれども、同時に世界との差が十分に分かった試合にもなりました。体力面での課題も見つかりました。日本では敵なしだった太田にとって、世界でやることの価値はやはり大きいでしょう。太田は『久々に悔しいという気持ちになれた。これが北京五輪に生きれば・・・』と団体戦の成果を語ります。
「北京五輪での目標は?」と質問を向けてみました。すると表情がぐっと引き締まって、「メダルを期待してもらっていい。そして、もちろん真ん中(金メダル)を取りたい」ときっぱり。
敗戦をバネに目覚めた日本のエースに、日本初のメダルを期待したいと思います。
透明のマスクに四苦八苦
マスクが『金網』ではなく透明のもの・・・大会で使用するマスクの種類を選手が知ったのは昨日のことだったそうです。このマスクが「金網」か透明かというのは、フェンシングで最も大切な視界に影響します。見た目が魚眼レンズのように、若干変化して見える透明のマスクは、各選手とも、あまり使用経験がなく、みんな「慣れるのに苦労した」と口を揃えました。
北京五輪でも同じマスクが使用される。今回は事前の下調べの不足でもありますが、これが本番でなくて本当によかったといえるでしょう。その意味でも、日本フェンシングにとって、大きな価値があった大会となりました。(朝倉浩之)
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