今月14日、ロシアのラブロフ外相は、ロシアを訪問中の日本の高村外相と会談を行い、懸案のミサイル防衛システムについて、アメリカ、ヨーロッパ諸国、ロシア、日本などの関連国が共同でミサイル防衛システムを構築することを提案しました。それに対して、高村外相は、日本がアメリカと共同で行っているミサイル防衛システムの構築は、「北朝鮮のミサイルの脅威に備えたやむを得ない行動であり、ロシアに向けたものではない」と語りました。
これまで、ロシアはアメリカが進めるミサイル防衛システムについて、強く反発してきました。ミサイル防衛システムについてぎくしゃくした米ロ関係が続いていますが、特に2007年1月、アメリカがイランなどによるミサイル攻撃を想定して、東ヨーロッパのポーランドとチェコにミサイル防衛システムの配備を進めようとしたことにより、両国関係は急速に冷却しました。
この膠着した状況を打破するため、米ロ両国は去年10月と今年3月の2回にわたって、外相と国防相の会談を行いました。しかし、双方の意見は一致せず、この問題の解決には実質的な進展がありませんでした。これと同時に、ミサイル防衛システムの配備について、アメリカとポーランド、チェコとの話し合いが着々と進められてきました。
これを背景に、今月の初めに開催されたNATO・北大西洋条約機構の会議のあと、黒海沿岸のリゾート地・ソチで、ロシアのプーチン大統領はアメリカのブッシュ大統領と、5月の自らの退任を控えて、最後となる見込みの会談を行いました。この会談で、ミサイル防衛システムについて両国の見解は一致しなかったものの、ミサイル防衛も含めた両国関係の戦略枠組みを示す文書を発表する方向で調整していました。その戦略枠組みの中では、ミサイル攻撃に対応する共同システムの構築、そしてロシア、アメリカ、ヨーロッパ諸国が、対等のパートナー関係で共同参加することが提案されました。プーチン大統領はその後、「ミサイル防衛システムについて、アメリカと共同で構築し、平等に管理しなければ、ロシアの懸念は消えない」と語りました。
ソチでの会談で進められたロシアとアメリカがミサイル防衛システムを共同で構築するという意向が、緊張していた米ロ関係を一時的に緩和させているようです。これを踏まえて、ロシア外相が日本にこの共同システムへの参加を呼びかける運びとなりました。仮に日本の支持が得られれば、ロシアはさらに主導権を握ることができ、アメリカを一層牽制し、自国の安全と利益を守ることになると思われます。
ロシアがこれまでの猛反発と不満の態度を改め、「ミサイル防衛システムの共同構築」を提案したことについて、分析者はあくまでも米ロ両国の実力の差に大きく左右されたとみています。ロシアが、国内の経済構造の転換などの課題を着実に解決し、国力を増強させないかぎり、ロシアの一時的で強硬な態度と最終的な妥協は、今後の米ロ関係に大きく影響することでしょう。
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