イラン政府のエルハム報道官は20日、イランの核交渉首席代表を務めるラリジャニ国家安全保障最高会議書記の辞任を発表しました。イラン核問題がいっこうに明らかにならず、アメリカをはじめとする西側諸国からイランへの制裁を求める声が上がっている中、ラリジャニ氏の辞任は非常に大きな意味を持ちます。
ラリジャニ氏は、1957年にイラクの名門に生まれ、親族の多くがイラン宗教界と政治界に強い影響力を持っています。彼は、イラン国営ラジオ放送局、テレビ局の責任者を歴任し、イラン革命防衛隊の指揮官を務めたこともあります。2005年、アフマディネジャド大統領の任命で、国家安全保障最高会議書記に就任し、合わせて核交渉の最高責任者でもある首席代表を兼任することが決まって、脚光を浴びるようになりました。
エルハム報道官は20日の記者会見で「ラリジャニ氏が、数回にわたって辞意を表明した結果、アフマディネジャド大統領はそれを認めた」と述べましたが、辞任の理由について、詳しく説明しておらず、「個人的理由だ」と述べるにとどまりました。一方、専門家は、ラリジャニ氏の辞任は、交渉政策について大統領と意見の食い違いがあったためと分析しています。核計画の中止では、意見の一致を見ましたが、ラリジャニ氏が主張した「更なるメリットを求める」実務的な戦略について、アフマディネジャド大統領は異なった意見を持っているということです。イラン大統領の強硬な姿勢により、EUとの核交渉がさらに難航しかねないとされています。
また、政治的意見の食い違いが原因で、ラリジャニ氏は、アフマディネジャド大統領により指導陣から締め出されているといううわさもあります。ある専門家は「ラリジャニ氏が、政界でより重要な役割を果たすため、イランのイスラム議会進出をする可能性がある」としています。
エルハム報道官はさらに、「ヨーロッパ・アメリカ問題担当のジャリリ副外相がラリジャニ氏の後任になる可能性が高い」との見通しを明らかにしました。注目されるイラン核関連政策について、エルハム報道官は「イランの核関連政策は人事異動に影響されることはない」と強調しました。しかし、西側のメディアは、「大統領寄りであるジャリリ氏の就任は、さらに大統領の脇を固めることになり、核交渉におけるイラン側の姿勢がさらに強硬になりかねない。一方、交渉において経験不足なジャリリ氏は、合法的な原子力利用によるイランの権益を守れるかが懸念されている」としています。
イラン核問題は、ここ数年、国際的に注目されている問題で、イランが平和的開発を口実に核兵器の開発を進めることを西側諸国は心配しており、核燃料の研究活動を停止するようイランに要求し続けています。国連安保理も、ウラン濃縮の停止をイランに求める二つの決議を採択しました。最近、西側諸国によるイラン制裁の声が上がっている中、ラリジャニ氏の辞任がイラン核問題にどんな影響を与えるかは、今後も注目されるところです。(翻訳:コオリ・ミン)
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