ロシアとNATO・北大西洋条約機構の理事会による大使級会合が26日モスクワで開かれ、双方は、ヨーロッパでのミサイル防衛システムの配備と欧州通常戦力(CFE)条約などについて協議を行いましたが、合意には達しませんでした。
「欧州通常戦力条約」は、NATOとワルシャワ条約機構の加盟各国が1990年に調印した通常戦力に関する軍縮条約です。1999年、欧州安全保障・協力機構はワルシャワ条約機構の解体やソ連の崩壊を受けて、この条約の修正案を打ち出しました。しかし、NATOはこれを承認していません。その後、NATOの東方拡大、それにアメリカのポーランドやチェコでのミサイル防衛システム配備という計画の発表を受けて、ロシアは脅威を実感し、対応措置を取ろうとしています。
ロシアのプーチン大統領は今年4月の年次教書演説で、「元のワルシャワ条約機構の加盟国のNATO加入によって生まれたこの地域の政治力のアンバランス状態に対応するため、ロシアは、『欧州通常戦力条約』の履行を凍結する必要がある」との姿勢を表明しました。また、今回のロシアとNATOの大使級会合に参加したロシアのラブロフ外相は、「『欧州通常戦力条約』は、ヨーロッパの安全にとっては基盤となるものだ。しかし、現在、この条約を履行しているのはロシアだけだ。また、この条約の修正案をNATOは承認しないばかりか、一部のNATO加盟国は、これをロシアへ圧力を加える手段としている」と批判しました。
一方、今回の大使級会合に出席したNATOのヤープ・デホープスケッフェル事務総長は、この問題では譲歩しない姿勢を示しています。デホープスケッフェル事務総長は、「NATOとロシアは合意に達していないが、対話は続く。『欧州通常戦力条約』の修正案の承認は、グルジアとモルドバからのロシア軍撤退を盛り込んだ『イスタンブール宣言』の実施状況と合わせて検討すべきだ」と強調しました。
そして、ヨーロッパでのミサイル防衛システムの配備についても、ロシアとNATOは大きく食い違っています。ロシアのバルエフスキー軍参謀総長は今回の会合に先立って、「ロシアは、現在、アゼルバイジャンのレーダー基地をアメリカと共に利用することを提案している。そのため、アメリカは東ヨーロッパでのミサイル防衛システムの配備をただちに停止すべきだ」と語りました。また、ロシアのイワノフ第一副首相は、「ロシアは、トーポリM型戦略ミサイルの生産を始めており、ロシアの戦略核兵器の更新は新たな段階に入った」と強調しました。
ところで、ロシアとNATOは、対立する立場を取っているものの、双方は交渉を放棄するつもりはないと見られています。ロシアのプーチン大統領は26日、「NATOとの間には問題があるが、対話を通じて解決することができる」と述べました。これに対し、NATOのデホープスケッフェル事務総長は、「NATOとしては、いまは、ロシアとの正常な友好関係を保っていくしかない」と語っているのです。 (翻訳:鵬)
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