イラク駐留アメリカ軍はこの15日、バグダッド南部にある内務省施設の地下室で173人の収容者を発見しました。これらの収容者は栄養失調状態にあり、拷問を受けた形跡もあるため、虐待された疑いが強まっています。
イラク移行政府にとって重大な失態となったこの事件に対し、ジャファリ首相は「事実関係を調査し、関係者を処罰する」と発表しました。
173人の収容者のうち、大多数がスンニ派のイラク人であるため、スンニ派政党は国際的な調査を要請しました。16日、スンニ派の最大政党「イラク・イスラム党」は「アメリカの支援を得たシーア派主導の移行政府は来月15日の議会選挙を控え、スンニ派を抑圧する」と指摘し、こうした露骨な人権侵犯行為を非難するよう国連、アラブ連盟、国際人道機関に呼びかけました。
「イラク・イスラム党」のタリク・ハシミ書記長は「内務省ではこれは最初の収容者虐待事件ではなく、この事件に対し国際的調査を行い、虐待を実施した者に厳罰を加えるべきである。バヤン・ジャブル内務相がこの事件に関与したとするならば、辞任するべきである」と表明し、虐待行為への批判を行なうようシーア派の最高権威者であるアリ・シスタニ師に要請しました。
スンニ派で大きな影響力を持つ「イスラム聖職者協会」の高級幹部クバイシ師は「移行政府はこの事件に責任を持つべきだ」とし、事実調査に関して国連機関が介入することを求めました。
16日、アナン国連事務総長のスポークスマンは声明を発表し、「収容者虐待は人権侵犯であり、イラクでの収容者虐待問題は深刻である」と指摘し、欧州議会外交委員会は「イラク政府は人権を重視すべきである」とし、イギリスのストロー外相も「拘束者への虐待は絶対に受け入れられない。イラク政府は虐待の再発を防止しなければならない」と語りました。
15日、イラク駐留連合軍は拘束者への虐待に反対する声明を発表し、アメリカ軍は拘束者の現状を調査し、イラク軍と共に内務省の収容所に対する合同調査を実施することになっています。
イラクではアメリカ軍とイラク軍は治安維持で大量の容疑者を拘束し、審判を行なわずにこれらの拘束者を長期拘留しており、虐待などの人権侵犯行為が頻繁に発生しています。拘束者の大多数がスンニ派であるため、スンニ派政党と住民から不満が高まっています。(11/17)
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