1週間にわたるIAEA・国際原子力機関の理事会会議は、13日オーストリアの首都ウィーンで開催されましたが、IAEAのスポークスマンは、当日の会議の後「理事会では、現職のエル・バラダイ事務局長の4年間の再任を全会一致で可決した」と発表しました。関連規定によりますと、エル・バラダイ事務局長の任命については、今年9月行われるIAEAの総会で許可を得なければならないとのことです。こうしてこれまで半年も討議が続いたIAEAの事務局長の人選問題は解決されたのです。

　エル・バラダイ事務局長は、当日の記者会見で、「35カ国の理事会メンバーの支持に感謝すると同時に、IAEAのすべての加盟国からの信頼に感謝する。IAEAはこれからの四年間、世界の安全と発展という二つの重要な議題を含む厳しいチャレンジに直面している。私は、核拡散の防止や貧困撲滅に尽力し、国際社会と共に非核化の実現に尽力していく。新しい任期にも公正かつ独立したやり方で国際問題を解決していく。これは国際組織として最も重要な原則だからである」と表明しました。

　今年62歳のエル・バラダイ事務局長は、エジプトに生まれ、1960年代にはカイロ大学で法律学士の学位を取得しました。さらにアメリカのニューヨーク大学に進学し、国際法の修士と博士となったのです。その後1964年に22歳のエル・バラダイ氏は、エジプト外務省に就職し、外交活動に従事し始めたのです。のちに、エル・バラダイ事務局長は、WHO・世界保健機関、ILO・国際労働機関と国連安保理など国際機構で職に就き、多くの経験を積み重ね、1984年にIAEAに入り、事務局長国連常駐代表、IAEAの法律顧問、法律部責任者、及び対外連絡担当のポストについたのです。そして1997年12月にエル・バラダイ氏はIAEAの事務局長となり、2001年に再任しましたが、今回の任期満了は今年の11月30日なのです。今年62歳のエル・バラダイ事務局長はアラビア語、英語とフランス語に通じています。

　ところで、エル・バラダイ事務局長は今期就任中、イラクの核査察、イランと朝鮮の核問題という厳しいチャレンジを経験しました。またイラクが大量破壊兵器を保有するかどうかについて、エル・バラダイ事務局長は公正な立場で査察することを主張し、アメリカが提供した情報に疑問を抱き、イランの核問題については、「確かな証拠がない場合は、冷静に処理することが正しい」と見ており、イラン制裁に強く反対しました。こうしたエル・バラダイ事務局長の積極的な斡旋により、2003年12月にイランは「核拡散防止条約」の付加文書に調印したのです。また、朝鮮半島の非核化プロセスで、エル・バラダイ事務局長は、朝鮮とIAEAとの協力を促す一方で、核実験問題については即時にIAEAに通報するよう韓国に呼びかけたのです。

　関係者は、「ほかの事務局長の候補者がいないという情況の下で、アメリカがエル・バラダイ氏の事務局長再任を支持したのは、一部の国の核開発技術獲得を防止する上で、IAEAとのさらなる協力を求めることにある」と見ています。