3月8日は「国際労働婦女節(世界婦人デー)」です。中国では働く女性は半日休みとなるところが多いほか、観光地の入場料も女性のみ割り引きになったりします。3月8日なので数字の音から「三八」とも呼ばれています。
今日の中国民族音楽の時間は、ここ数年日本でも人気が高まっている中国の民族楽器・二胡を紹介しながら、四人の二胡奏者が奏でる曲をお聴きいただきます。特に民族音楽界で活躍する女性にも注目してみました。それぞれの異なる、芸術的な二胡の音楽をお楽しみください。
『草原上』
二胡は中国の民族楽器を代表するもので、弦が二本であることから「二胡」と呼ばれています。その繊細で哀愁を帯びた美しい音色は、音楽の魂をうまく表現することができ、圧倒的な存在感を持つ弦楽器として「東洋のバイオリン」と呼ばれるほどです。その澄み渡る音色は中国の広大な草原や山河を想わせます。まず最初は二胡の大家・劉明源の作曲・演奏による『草原上(草原で)』をお聞きいただきましょう。この曲は蒙古族が、民族楽器・馬頭琴で、内蒙古の広く美しい草原を表現しました。
目を閉じて、耳を澄ますと、どこまでも続く草原の風景が見えてくるようですね。まるで広大な草原の上に、一人ぽつんと立っているような感じです。
『江河水』
女性演奏家・閔恵芬さんは二胡の分野で第一人者と言われるだけでなく、中国音楽界でも常にトップアーティストです。1963年、18歳の閔恵芬さんは「第4回・上海の春 全国二胡コンクール」で最優秀賞に輝き、一躍注目を浴びました。その後、彼女はアメリカ、フランス、カナダなど世界数十ヵ国での演奏活動を通じ、世界的な名声を得ました。音楽評論家には「超天才二胡奏者だ!休符にも音楽が満ちている」と評価されるほどでした。1977年、彼女の演奏した『江河水』を聴いた世界的な指揮者・小澤征爾氏は「人間の悲哀を奏で、聴く者の胸を突き破るほどの力に満ちている」と感極まり、涙に震えたと言われています。
全てが順調であった1981年、閔さんは重病にかかました。5年の間に手術を5回、化学療法を15回も受け、苦しい闘病生活を送りながらも、彼女は常に明るさを失わず、舞台への復帰を目指し努力していました。1987年9月に開催された「第1回・中国芸術祭」で、彼女は6年も舞台を離れていたにもかかわらず、再び『江河水』を演奏し、その素晴らしい演奏と、奏でる音楽の魅力に観客全員が、惜しみない拍手を送り続けました。
では、閔恵芬さんが奏でる『江河水』をお聴きただきましょう。この曲は、苦難のどん底に暮らしている人々の苦しみを表現した曲です。
『牧羊女』
二胡の澄み渡る音色は、本当に悠久の歴史の賜物だと言えますね。
続いてご紹介する劉長福さんは、二胡の北方派を代表的する演奏家です。彼は16才で中国中央音楽学院附属中学校を優秀な成績で卒業し、内蒙古芸術学校の教師として赴任しました。その後、彼はモンゴル草原で15年間生活を送り、1970年代に中央音楽学院へ進学します。現在は中央音楽学院の教授として、若手の教育に力を入れています。
草原での15年の青春期を振り返り、劉さんは「素朴で優しい遊牧民たちから楽天的な感覚を教わり、美しく広大な草原と多彩な民族音楽が私に多くのインスピレーションを与えてくれた。草原での生活が無ければ、今日の作品を創作することができなかったであろう」と感慨深そうに話しています。
では、劉長福さん作曲・演奏の「羊飼いの娘」をお楽しみください。この曲は豪快な作風で、新疆ウィグル自治区の美しい景色やタジク族の少女の美しい踊りをうまく表現しています。
お聞きいただいたのは、二胡の北方派を代表的する演奏家・劉長福さんが奏でる「羊飼いの娘」でした。
今日の中国民族音楽は、四人の異なる二胡奏者が奏でた芸術的な曲をご紹介しました。最後にお送りするのは、二胡の若手奏者を代表する沈多米さんが奏でる「江南春色(江南地方の春)」です。この曲は江南地方の民謡をもとにアレンジしたもので、江南地方の春の美しい光景を表現しています。それでは、また来週まで!御機嫌よう。再見!!
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