こうして夜が明け、大雨も止み、外は静かになったので、村人たちは、あの娘が棲む白竜潭にきた。するとどうしたことか、池の水はどこかにいってしまい、多くきれいに咲いていたハスの花も姿を消し、池のそこの方に大きな穴が開き、そこから白いドロがぶくぶくと噴出していたのだ。
「いったい、これはどういうことだ?」
「何がおきたんだ?」
「どこの誰かが白竜の娘さまを怒らしたんじゃないのかね?」
「きっとそうだよ。それはここの掟を守らないひどいやつに違いない」
人々はこううわさをしてから、呆然とその場にしばらくいたが、そのうちに仕方なく戻っていったという。
実は、かの白竜の娘は、自分が一番苦手な狗肉のにおいに息がつまり、我慢できなくなると、竜の姿に戻り、池のそこに穴を開けて遠くの山の中腹から空に飛び出し、近くの川に飛び込むと、その河の本流でありかの瀾滄江に入り、実家である父の竜王の元に返り、休んでしまったのだそうな。
で、白竜の娘は、この白竜潭を去るとき、息が苦しいためふらふらし、逃げるだけで死に物狂いだったせいか、下女の柳青をつれかえるのをわすれてしまい、当の柳青が目覚めた時には、すでにいなかった。そこで柳青は一人で瀾滄江にかえる許しを受けていないので、かわいそうに仕方なく近くの小さな池に身を潜めるしかなかった。
そしてかなりの月日がたち、このちいさな池からはとてもきれいな水が湧き出し、池のほとりには青々とした柳の木が多く育だった。いまでは人々はこれら柳の木を大事にし、この池の水をつかってくらしているという。
どうです?おくばりはいけませんね。でも、白竜と娘についてきた下女の柳青がかわいそうですね。もしこの林涛が、当の柳青でしたら、当然のこと瀾滄江にもどり。竜王に「お嬢さまがいなくなられ、どう探しても見つからないので、もしやと帰られたのではと思って私も帰ってきました」と言い訳するんですけどね。なにしろ、かわいそうだよ!!
とまあ、関係ないか。
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