「さあ、白竜のむすめさんよ。実は家には老いた母、病に倒れた妻、そして8人もの子供がわしの帰りをいまか、いまかとまっておりますので、どうか沢山ものをくだされ!」
こうして茶伍は一度に百以上のものをほしいと願い、それらのものが出てくるのを待った。しかし、いくら待っても出てこないばかりが、最初のもらった服、布団とお碗がふと消えてしまった。
「ありゃ?どうしたんだ?ものがでないでけでなく、あの三つまでがどこかえきえてしまったわい。」とそこら一帯をどうさがしてもみつからない。
「なんということだ!!ふん!白竜の娘め、いまに思い知らせてやる!」
怒った茶伍は、五匹のラバを引いて近くの村に行き、先にラバを木に繋ぐとある農家から高い金で一匹の大きな犬を買い、なんとその犬を森の中に引き込み打ち殺し、また鍋を借りてそれをぐつぐつ煮た後、冷めるのをまってから鍋ごとかの池のほとりまで運んだ。
「ふん!何が恩人だ。わしにとっては仇じゃわい。これでもくらえ!」とあたりに人影がないのを確かめたあと、煮た犬の肉を煮汁と共に全部を白竜潭の中へと流し込んだ。
「はは!ざまあみあがれ!白竜の娘とやら!狗肉でもくらえ!」と言い残し、村人に見つかっては大変だと、自分は一匹のロバに乗って他の四匹を綱で引き、あたふたとその場を離れて逃げていく。
ところが、ロバに乗った茶伍が三里を行かないうちに、なんと、五匹のロバは次々に倒れてしまい、全身を震わせると、悲しい嘶き残して死んでしまい、当の茶伍もどうしたことが、急に胸元が痛くなり不意に多くの血を吐き、その場であの世に行ってしまった。
しかし、誰一人この様子を見たものはなかった。
そしてその日の夜、なんと黒雲が空を覆い、強い風が吹き出し、稲妻と共に大きな雷がして、雨が降るはじめたかと思うとすぐに土砂降りとなり、それもどんどん強くなり、果ては鉄砲水や山津波がおこり、大地は揺れ動き、それはすごいものとなった。しかし、どうしたことが、鉄砲水や山津波は人々の住んでいる村を襲わなかったので、村人たちはただ、恐ろしがって家に閉じり、震えながら寝るのことも忘れて、囲炉裏などのそばで一夜を明かすことになった。
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