それより不思議なことは、誰かの家で婚礼や何か大きなことがあり、その家が貧しく困っているときに、娘と下女の棲む白竜潭のほとりにきて線香を焚き土下座して叩頭し、目をつむってから「白竜の娘さま、困っておりまするのでどうかお助けくださいまし」というお呪いの言葉を並べてから、ほしいものをいい、しばらくして目を開けると、そのほしいものが目の前の置いてあるという。しかし、ほしい物の数は三つ以内と決まっていてそれ以上欲張ると、何にも得られなかった。
もちろん、このことはすくさま広がり、暫くすると、貧しさのために他郷へ生計を求めに行っていた人々も、相次いで戻ってくるばかりか、別のところに住む貧しい人々もこれを耳にし、この池にきて白竜の娘に必要なものをもらい始め、みんなは白竜の娘のことを恩人と呼び始めた。
と、数年後のある日、このことを耳にした茶伍という他の地方の男が五匹のラバを引きこの白竜潭のほとりにきた。
「ここかい?へー!竜の娘が貧乏人に物を惜しみなくくれてやっているという池は。ひひひ。どうせ赤の他人に物をくれてやるのなら、わしにもくれよなあ。さて聞いたとおりにはじめるか」
茶伍は、早速線香を三本焚き、その煙がゆらゆらと舞い上がるのを見てから土下座し叩頭してから願った。
「白竜の娘さま、困っておりまするのでどうかお助けくださいまし。どうか、エーっと!服と布団、それからお碗をお恵みくださいまし!」
すると、近くで白い煙が立ったかと思うと、真新しい服、布団とお碗が現れた。
「おう!これは。ひひひひ。あれはホントだったんだな?それじゃ、わしは遠慮なくもっともらうか。この五匹のラバに乗せられるだけのものをな。そしてそれを人に売りつければ儲かるぞ!ひひひひ」
こう言うと茶伍は、もってきた線香に全部火をつけたので、その煙はもくもくと空へ舞い上がった。
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