中国で最も長い河である長江の中・下流域は、湿地が集中している地域の一つであり、中国で人口が最も密集している地域でもあります。いかに地元住民の生活に影響を及ぼさず、湿地を保護するかということに地元の環境保護機構は長い間頭を悩めてきました。5年前、この問題の解決の糸口を探すため、中国政府は国際環境保護組織と協力し、国際湿地保護システムを導入しました。
中国の生態保護を担当する部門である国家林業局の周生賢局長は、「河川や沼、湖などの付近に多い湿地は、森林や海洋と共に世界の3大生態系システムとして、水資源を保ち、水質を浄化するほか、気候を調節する役割がある。このことからも、湿地の保護はとても重要なことである」と紹介しています。
中国は世界でも湿地の種類が最も豊富な国の一つです。全国の湿地面積は3600万ヘクタールあり、これは世界第4位です。これらの湿地は、主に青海チベット高原や、雲南省、貴州省、及び長江の中・下流に集中しています。
特に青海チベット高原や雲南省、貴州省などの湿地では、多くの自然保護区を設置して環境保護を進めています。しかし、人口が多く都市環境の違う長江流域では、長年にわたり湿地保護と経済発展の矛盾に悩んでいます。そのため湿地面積の減少と生態環境の悪化を招く結果となりました。この問題を解決するため、中国政府は1999年から有名な国際環境保護機構の世界自然基金会と協力し、長江流域に新しい湿地保護システムを導入しました。このシステムは、ヨーロッパのライン川流域で行われた生態保護の経験を参考に発案されたものです。
中国政府は湖北省と湖南省からテスト地区を選び、生態系農業を取り入れながら、徐々にテスト地区の範囲を拡大しています。テスト地区では、農家が従来からある生態環境を利用し、環境に配慮した農業や漁業に取り組んでいます。このプロジェクトを実施して5年。水生植物や鳥の種類が10種類も増えただけでなく、農家の平均年収は、生産方式を変える前の4倍に増加しました。世界自然基金会・中国駐在の李利峰さんは「ここ数年、総合的な管理を通して湿地の保護と経済発展の両面を維持している」と話しています。
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