6月9日ー16日にかけて行われた「オートチャイナ・北京国際モーターショー(中国語名:北京国際汽車展)」は、20の国と地域から1400社余りの自動車メーカーや自動車部品の会社が参加し、史上最高規模で開催されました。新車種を大規模な展示でアピールした海外の自動車メーカーの他に、近年大きな発展をとげた中国の国産車にも注目が集まっていました。
安徽省にあるチェリー自動車販売有限公司は1999年に生産を開始したばかりの新しい自動車メーカーです。ここ数年新車種の開発に力を入れ、販売も好調に伸びています。チェリー自動車販売有限公司の金経理によると、現在中国が世界に輸出する自動車のうち半数がチェリーの自動車だということでした。チェリー自動車は生産を開始した当時、従業員数はわずか300人でしたが、現在は凡そ1万人に達しています。オーストリアに研究所を設け、外国人スタッフと共に研究開発を行うほか、毎年150人の研修生を中国から派遣しています。また、イランで年間3万台が生産可能な工場を作り、チェリーが技術と部品を輸出しているそうです。
チェリー自動車の人気車種?QQ。 デザインの古い国産車でも格安の値段を見て 男女共に好まれている車種 足を止めた来場者
中国の自動車市場に重要な位置付けを占める海外メーカーとの関わりは80年代までさかのぼります。初めて中国の自動車市場に進出した海外メーカーはドイツのフォルクスワーゲン社でした。80年代に上海で「上海大衆」という合弁企業をつくり、当時ドイツで人気車種だった「サンタナ」を主に生産してきました。現在はドイツ国内でサンタナは生産されていませんが、中国では依然として人気車種です。その他にもアウディ、プジョー、シトロエン、フィアット、ホンダ、トヨタ、日産、マツダなどもローカルのパートナーと共同で現地生産しています。メーカーの数も増え、競争が激しくなってきていことを物語るように、フォルクスワーゲン社が2008年までに中国へ50億ユーロを投資すると発表したあと、アメリカのGM社も今後3年間で中国に30億ドルの追加投資を決めました。その他にも、GM社はアジア太平洋地域の本部をシンガポールから上海に移転するとしています。今回のモーターショーでは各自動車メーカーが宣伝のため様々な工夫をしていたのも印象的でした。なかでも来年中国に登場するアメリカ・フォード社のアストンマーチンは人気映画「007シリーズ」に登場したもので、ボンネットに機関銃やミサイルなどが装備された車が展示されました。もちろん話題づくりのためで、展示された車は実用的なものではありませんが、かなりの来場者の注目を集めていました。
映画「007シリーズ」に登場したアストンマーチン。 ボンネットにはミサイルやマシンガン搭載
国内のマスコミは、現在の中国の自動車市場を「平和と戦争」という言葉で例えています。平和とは中国の自動車産業の順調な発展ぶりを意味し、戦争とは自動車業界で始まった競争や値下げ合戦がますます激しくなってきたということを意味しています。統計データによると今年上半期に値下げを発表した車は月平均で25種。その台数は去年一年間に値下げした台数にあたります。先月、上海GMが値下げを発表すると、フォルクスワーゲン社も2008年北京オリンピックのオフィシャルスポンサーになったことを記念して、全車種に対して値下げをすると発表しました。その他にもフランスのシトロエンが値下げ作戦をすでに開始しています。値段が手ごろなら買い換えを考えている人も多く、デザインや性能よりも値段を最優先にする傾向があることも各社の値下げ合戦に影響しているとも言われています。買う側にとって値下げは嬉しいことですが、自動車業界の販売状況も最近好調ではないようです。北京の自動車販売の低迷はモーターショーの開催で緩和されるどころか、自動車業界関連の株価も更に下がりました。関係者の分析によると車自体の値段は下がっていますが、保険料やガソリン代が高くなりつつあること、利子が高い自動車ローン、駐車場の不足、交通渋滞の深刻化などで、北京市民のマイカー購入意欲の低下に影響を与えているようです。皮肉なことですがモーターショー開催中、メイン会場付近は連日大変な交通渋滞でした。これからは、ただ車を売るだけの時代ではなく、交通渋滞などその背後に抱える問題の改善も同時に進めなければならない状況のようです。
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