日本の大相撲はこの6月、中国の北京と上海で公演を行われる。中日国交正常化を記念して1973年に初めて行われた公演より31年ぶりの二回目となる。中国のマスコミ各社も早くからこれを伝えているが、なかでも注目を集めているのが北京出身の力士、三段目の仲の国さん。中国の若者が、なぜ日本の伝統文化にひかれ、相撲界入りしたのか、そんな相撲への思いや中国公演に対する意気込みなどについて、仲の国さんに語ってもらった。
185センチ、145キロの大男だが、ふくよかな頬にはニキビがいっぱい。まだあどけなさの残る、弱冠二十歳の若者だ。
日本相撲協会の代表団の一員として、このほど中国を訪れた。日本に住んで三年になるが、初めての里帰りである。海外場所のメンバーはふつう幕内力士を中心とするが、中国生まれで出世頭の仲の国さんは、三段目ながら参加が予定されている。「もう嬉しくてなりませんよ。光栄なことと喜んでいます。それにしても北京の変化はすごいですね!」と大きな体を揺すりながら歓声をあげる。
オリンピックで知られる世界のスポーツ、柔道に憧れていた青年だった。北京で三年稽古をしたが、やがてそれでは飽き足らなくなり、「本場で修業してみたい」と高校を卒業した後単身、日本へ赴いた。柔道で鍛えぬいた自慢の体は、100キロをゆうに越えていた。体力も十分にある。そんな優れた体格を見て、日本語教師の勧めた道が、柔道ではなく相撲であった。角界入りのきっかけは、そうしたひょんなことからだった。「テレビを見ていたら、とても面白そうでした。これならぼくにもできるかな~と。最初は全くの好奇心からだったんですよ」
2002年5月に湊部屋(湊親方・元小結・豊山)に入門。同年7月に初土俵を踏み、二場所で三段目に昇進するというスピード出世を果たしたが、それも柔道の心得があったからにほかならない。その後は「ずっと足踏みしている」と謙遜するが、入門してから一日として休むことなく朝5時に起床、五時間たっぷり厳しい稽古に勤しんでいる。湊部屋でも、ナンバーツーの期待の星だ。
「つらい稽古や、難しい礼儀作法、大変なことはいろいろあるけど、やっぱり相撲はいいですね。町へ出ても、力士はみんなから尊敬されていると思う。日本人は本当に相撲が好きなんです。それがとてもいいですね」。根っからのスポーツ好きで、格闘技好き。まじめな性格で体格にも恵まれているとあれば、そんな若者が相撲にのめり込むのも自然のなりゆきだったのだろう。異国の地では、相撲ファンの応援も大きな励みとなっている。
現在、約700人いる力士の中で、外国人力士は50人あまりに増えている。快進撃を続ける横綱の朝青龍、前頭の朝赤龍はお馴染みのモンゴル出身、前頭の黒海はグルジア、三月場所で幕下優勝の琴欧州はブルガリア、三段目優勝の南ノ島はトンガの生まれと、国際色も豊かになった。中国出身の力士もこの二年で仲の国さん一人から六人までに急増している。(四月中旬現在)
6月の中国公演では、北京と上海で合わせて5万人が会場を訪れる見通しだ。北京市順義区に住む仲の国さんの両親も、一人息子の成長ぶりを楽しみにしているという。
「人民中国」2004年6月号より
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