「嫦娥5号」のサンプル、外来岩屑研究で新たな進展

2022-12-26 13:31:26  CRI

 「嫦娥5号」が持ち帰った月土壌に含まれる外来岩屑は月面物質のすき起こしや変転の過程、月の地殻岩石の構成の多様性、月地殻の地質進化などを認識するため一定の情報を提供するとされています。中国科学院地球化学研究所の科学研究チームは同サンプルの研究を通じて、月の20億年前の若い玄武岩地質中の外来火成岩の砕屑を採取しました。この月地殻に含まれる特殊な岩石屑を発見したことで、月にはまだ知られていない地質が存在していることが突き止められました。同研究はこのほど、惑星科学定期刊行物の「ネーチャー・アストロノミー」で発表されました。

 「嫦娥5号」の着陸エリアの地質は20億年前に形成された中チタン玄武岩で構成されており、米国の「アポロ」や旧ソ連の「ルナ」が持ち帰ったサンプルの採取エリアが30億年以上前の地質であるのに対して、比較的若い地質です。「嫦娥5号」がもたらした月土壌によって、月の若い地質の物質的改造と物質構成の研究にとっての、「月の地質の新たな時間帯」を知る窓口がもたらされました。月面は長期間にわたり小天体による衝突のために作り替えられています。すなわち、月の表面物質では破砕、すき起こし、変転、混合が繰り返されています。「嫦娥5号」がサンプルを採取したエリアの月土壌には他のエリアから飛散してきたものが一定量含まれています。

 中国科学院地球化学研究所の科学研究チームは「嫦娥5号」の月土壌中の3000個以上の粒子を分析し、中チタン玄武岩とは異なる7つの火成岩砕屑を識別しました。

 この研究により、その中の高チタンガラス斑状岩石屑は月の橄欖(かんらん)石玄武岩の岩屑である可能性があり、すでに報告されているアポロが持ち帰った橄欖石玄武岩とは異なる鉱物の構成と成分の特徴を持つことが分かりました。また、アポロのサンプルでは確認できなかったマグネシウム斜長岩砕屑も発見されました。この岩石は主に月高地にある斜長石質角礫(かくれき)岩隕石に含まれることが報告されており、このことは月の地球側半球にマグネシウム斜長岩があることを示しています。このほか、研究対象になった火山性ガラス屑にはアポロが持ち帰った火山性ガラスよりも酸化鉄含有量が高く、含有するマグネシウム比率を示すMg#値が低いことから、月における未知の(より進化した)火山噴火活動の存在も示されています。
 同研究を通じて、月の20億年前の若い玄武岩に存在する外来火成岩砕屑の構成情報が初めて取得され、同時に月の地殻に存在する特殊な岩石屑が発見されました。また、月の地殻構成の多様性やマグマ活動の多様性を示す証拠が提供されました。さらに、月にはまだ知られていない地質が存在することも示されたことから、将来の月土壌のサンプル採取や月上空からのリモートセンシング探査計画に科学面から支援を提供すると期待されています。(朱、鈴木)

 

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