斗が癸を指すと、穀雨になる。太陽の黄経は15度となる。西暦の毎年の4月20日の前後は穀雨の節気である。穀雨は、「雨水がいろいろな穀物を生みだす」という意味があり、二十四節気の中の六番目の節気であり、春季の最後の節気でもある。民間に「清明になると、雪が降らなくなり、穀雨になると、霜が降りることもなくなる」という言い方があり、中国のほとんどの地域の平均気温はセ氏12以上になる。穀雨以後の気温の上昇が速くなり、この日から、降雨量が多くなり始め、十分な雨量のおかげで植えたばかりの水稲の苗、栽培したばかりの作物の灌漑がおこなわれ、五穀がすくすくと成長する。池の中のウキクサが生えはじめ、桑の木にも青緑色の新しい葉が出て、まさにカイコを飼う人たちが忙しくなる時である。春のお茶もこの時の前後に摘み取りが始まり、長江以南地域では、丘陵から高い山に至る所に顔中汗が流した茶栽培農家たちが茶をせっせと摘み取り、茶を作る農家の家はてきぱきとお茶をつくり、お茶の香ばしいにおいが野原や山間部の村落に満ちる。穀雨以後において農作業が多忙をきわめる時期になる。そのため、時を逸することなく、入念に耕作し、天気の変化に留意し、大急ぎで植えたり栽培したりし、農期を誤らないことで秋の収穫にとって極めて重要である。 穀雨の節気以後は降雨量が多くなり、空気の湿度が次第に大きくなり、この時わたしたちは養生の中で自然環境の移り変わりの軌道を離れてはならず、人体の内部の調節を通して内的環境(体内の生理の変化)を外的環境(外部の自然環境)の変化に適応させ、正常な生理的機能を保つことである。『素問・保命全形論』には、「人は天地の気をもって生まれ、四季の法則をもってなる」とある。これは人が天地の間に生れ、自然界の中の変化が必ず直接あるいは間接に人体の内的環境に影響を及ぼすことになり、内的、外的環境のバランスを保つのは疾病の発生を避け、減らす基礎である。そのため、養生を行う際に穀雨の節気の要素を考え、その気候の特徴に合わせて養生を選択的に行うべきである。 穀雨の節気以降は神経痛、例えば肋間神経痛、座骨神経痛、三叉神経痛などの発症期である。ここでみなさんに、発症しても緊張してはならず、異なった病因に基づいて、症状に合わせて治療するよう注意したい。 肋間神経痛について言えば、これは臨床でよく見かける自覚症状であり、その表われ方は片側あるいは両側わきのあばら骨のところの痛みである。漢方医学はそれを「わきの痛み」といっている。『霊枢・五邪』は「邪が肝臓にあれば、両側のわきの中が痛む」とある。『素問・臓気法時論』は「肝臓の病気にかかっている者は、両側のわきの下の痛みで腹を少し引く」とある。病因、病理から言って、肝臓はわきの部分に位置し、その脈は両側のわきに分布し、ゆえに肝臓の病気にかかると、往々にしてわきが痛む症状が現われる。しかし、肝臓は風、木の臓であるため、その性は調達を好み、憂鬱を好まない。もし情、志の鬱積があるならば、かんしゃくは疎通、排泄できなくなり、経絡と脈は妨げられ、経絡の気のめぐりが滞り、いずれもわきの痛みとなる。もしかんしゃくの鬱積で日が経つならば、気が滞って血鬱が生じ、転んだり、飛びかかったり、よけたり、挫いたりしたときに、経絡と脈の血鬱の停止を引き起こし、血鬱によるわきの痛みを招くことになる。どの病因に属するものであろうと、その根本はいずれもかんしゃくの滞りと関係があり、そのため、治療の面では肝臓をなだめて気をよくし、血のめぐりをよくして経絡を通じさせるという原則から離れてはならない。 座骨神経痛は座骨神経の通り道とその分布の部位の痛みのことを指して言うものである。おしり、太ももの後ろ側、すねのくるぶしの関節の後ろの外側のやけどのようなあるいは針で刺されたような痛みが多く現れ、重症者は刀で切られたような痛みを覚え、動けばさらにひどくなる。この病気は中国医学の「痺(しびれ)症」の範疇に属し、痺は阻んで通じない意味である。その病因はほかでもなく風、湿、寒、邪が経絡を犯して、この経絡、気、血、痺の滞りによってもたらされるのである。臨床の症状の違いによって、4種のパターンに分けられている。風邪を主とし、痛みが動き回るようになることを受けるものは、行痺といわれている。冷え、邪気を主とし、痛みが激しいものは、痛痺といわれている。湿気、邪気を主とし、表われ方は辛酸、マヒ、ひどくなるものは、着(引きつけ)といわれている。発症が急で、発熱の症状があるものは、熱痺といわれている。座骨神経痛にかかっているものは、上述の4種のパターンに基づいて、症状を見分けて治療を施し、経絡、気、血の滞りを疎通させ、風邪を治し、寒気を発散させ、湿気を取り除き、栄養を調和させてしびれをなくす。 三叉神経痛は顔の一定の部位に現れる続発性、一過性の激しい痛みである。この症状は顔の片側の額の部、上顎あるいはあごに多く生じる。痛みはしばしば突然起こり、稲妻のように、刀で切られるようで耐えられない。この症状が起こる年齢は多くは中年以後で、女性の患者がより多い。その病因、病理の多くは風邪と寒気の邪気を受け、顔の経絡において、経絡が急に収縮して引きつけるようになり、気、血のめぐりが妨げられ、突然起こる痛みである。『素問・挙痛論』は「寒気は経絡に入って遅くなり、泣いて行くことなく、脈の外にあれば血が少なく、脈の中にあれば気が通らず、それゆえに突然痛む。そのほかにかんしゃくの鬱積があり、鬱積がのぼせに化し、飲食の節制ができなくなり、食が滞って熱が生じ、肝臓、胃ののぼせが顔に上がり、さらに体の陰の虚を引き起こし、房事過多ならば精を傷つけ、陰の虚とのぼせが盛んとなってこの症状を招く。そのほか、歯、口腔、耳、鼻などの疾病がこの病を誘発することにもなる。治療を施す中で、その病因を究め、その病症を論じるべきである。寒風と寒気を受ける者にとっては、気、血を疎通させることを主とすべきである。肝臓、胃にのぼせが鬱積する者は、肝臓、胃ののぼせをなくすことである。陰の虚とのぼせの盛んな者は、陰を滋養してのぼせを下げる方法をとるべきである。鍼灸はこの病に対してよりよい治療の効がある。 穀雨の節気の気温は晴れて暖かいことを主とするが、いずれもなお時々寒い時、熱い時があり、早く出て遅く帰る人は更に自分の健康に気をつけ、必要でない苦痛の発生を避けるべきであ る。(チャイナナット)
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