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魏、晋の時代、都(洛陽)に、陸机という学者がいました。彼の家に、「黄耳」と名づけられた器用な犬がいました。 ある日、陸机は、故郷にいる母に手紙を送りたかったのですが、信用できる代行者が見つかりませんでした。 「困るなあ。早く母に教えないと。心配させたくないのになあ…」と、部屋の中を行ったり来たりして、手紙のことで悩んでいる陸机は、ふと、黄耳に目が向き、「この犬に手紙を送らせよう」との考えが浮かんできました。 「黄耳、ここに来て。仕事があるよ。この手紙を故郷に持って行き、母の返事を持ち帰るのを忘れないでね。」 陸机の言いつけを聞いて、黄耳は、これは大事な仕事だと分かったようで、厳しい顔をしていました。 陸机は、手紙を黄耳の体に巻きつけ、「わが犬よ、任せるぜ!早く行ってきて」と、黄耳の頭を軽くなでると、黄耳は、いきなり走り出しました。 道中、黄耳は、休むことなく走っていました。お腹が空くと、人が残したご飯を食べ、喉が渇いたら、露や雨水を飲んでいました。日照りや雨にもかかわらず、陸机の故郷へ走り続けました。 陸机は、黄耳が行った後、毎日、玄関口に立って故郷の方向を眺め、「黄耳はもう着いたかな。無事に帰ってくれよ。犬に手紙を持たせるのは、無理なことかな…」と、黄耳のことを心配していました。彼が、毎日、玄関に立っているため、敷居も壊れるほどでした。 そのまま50日が経ち、黄耳はやっと、やつれた顔をしながら、帰りました。 「よし!よくできたね!お前を最初から信じていたよ。可愛い我が犬よ。」 陸机は嬉しくなって黄耳を抱き上げ、持ち帰った手紙を取り、素早く読み始めました。 一方、へとへとに疲れてしまった黄耳は、地面に倒れたまま動かなくなりました。 手紙に夢中だった陸机は、読み終わってから黄耳が死んだことに気がつき、黄耳の遺体を抱いて泣き出しました。 「黄耳、我が忠実な犬よ。全部私のせいだ…私が悪い…絶対、お前の遺体を手厚く葬ってあげます。」 陸机は、自宅近くに、黄耳のお墓を造りました。それが、のちに、「黄耳塚」と呼ばれるお墓です。
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